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SMR開発のX-EnergyがシリーズC1で約761億円を調達。TRISO-X燃料製造施設の建設を推進

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先進的な小型モジュール原子炉(SMR)および燃料技術の米スタートアップのX-Energyが、シリーズC1資金調達ラウンドで約$500m(約761億円)を調達した。2024年10月16日に発表した。

X-Energyは、カーボンフリーな発電を実現する先進的な原子炉技術の開発・商業化を手がけており、本社は米国メリーランド州ロックビルにある。

次世代原子炉でカーボンフリー発電を実現

X-energyが開発を進めるのは、Xe-100と呼ばれるSMRだ。SMRとは、従来の原子力発電所より小型で、工場で製造可能な次世代型の原子炉のことである。

参考記事:開発に困難がありつつも進行する小型モジュール原発と欧米3社の動向

Xe-100も他のSMRと同様、道路輸送が可能なモジュール式設計を採用しており、建設期間の短縮とコスト削減を実現。1基あたり80メガワットの発電能力を持ち、4基から12基をまとめて設置することで、最大960メガワットまで出力を拡大可能だ。

また、米エネルギー省が「地球上で最も堅牢な核燃料」と評価する、独自のTRISO-Xという燃料技術も保有している。

TRISO-X(X-Energyメディアキットより)

このTRISO-Xは、同名の子会社が設立されており、資金調達に先立つ同年9月30日には新社長にJoel Duling氏を任命した。Joel Duling氏は、パシフィックノースウエスト国立研究所(PNNL)で副研究所長を務めた経験などを生かして、TRISO-Xの商業化とテネシー州の製造施設建設を主導する。

Amazonとの協業で5ギガワット発電を目指す

今回の資金調達は、AmazonのClimate Pledge Fund(気候変動への誓約ファンド)が主導。同ファンドに出資する形で、ミシガン大学などが応じた。

調達した資金は、原子炉設計とライセンスの取得、TRISO-X燃料製造施設の建設に充てられる。

X-EnergyはAmazonと協力し、2039年までに米国内で5ギガワット以上の発電施設展開を目指す。まずはワシントン州中部で、公共電力共同運営機関であるEnergy Northwestと320メガワットのプロジェクトを開始する。

X-EnergyのCEOであるJ. Clay Sell氏は「AIによって得られる(ビジネス面などでの)チャンスを実現するには、クリーンで安全、さらに信頼性の高い電力を供給する必要がある。Amazonなど投資家とともにエネルギーとテクノロジーの未来に向けた革新的なビジョンを実現する」とコメントしている。

 



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  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

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