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画面の向こう側が見える「透明ディスプレイ」|現在の技術と将来

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画像や映像データの出力デバイスであるディスプレイは技術の発展によってその機能、自由度を増してきた。例えば、薄型、軽量化、大面積化、視野角拡大、曲面形状、フレキシブル、耐候性、色表現の拡大などだ。

近年、これらに「透明」という機能が追加できるようになった。本稿では、透明ディスプレイの種類やそれぞれの原理、用途を紹介する。

技術面から見た透明ディスプレイの種類

通常、ディスプレイは電源offの状態で画面が真っ黒になる。これはディスプレイ背面の電子機器が光を透過しないためだ。

対して、透明ディスプレイは画像出力部全体を透明な部品で構成しており、電源off状態の見た目は窓ガラスと変わらない。電源を入れると、窓ガラスに映像を映し出したような見た目になる。

透明ディスプレイは用いられる技術によって性能が多少異なり、それによって適切な用途も変わってくる。以下でそれぞれの特徴を見ていこう。

LED|LGが有機EL方式を発表

ブラウン管とプラズマディスプレイが衰退した現代において、ディスプレイの方式は「LED」と「液晶」の2つが主流となっている。LEDは半導体を用いた自発光素子であり、ディスプレイに用いた際には鮮やかな色彩表現や省エネ面での長所を持つ。価格自体は液晶よりも割高だ。

LEDを用いた透明ディスプレイは、これまでディスプレイに用いられてきた不透明部品を透明部品で置き換えるだけで実現できる。透明導電体技術自体はタッチパネル等でも利用されていることから分かる通り、新たな技術というわけではない。

ラスベガスで開催された技術見本市CES2024においては、韓国LGが有機ELによる透明ディスプレイを発表し、大きな注目を集めた。

LEDを用いた透明ディスプレイでは背面からの光透過を完全に遮断することはできない。そのため、LG製透明ディスプレイは背面に設置したスクリーンを上げ下げし、背景の透過、不透過を物理的に制御する方式を採用している。

液晶:大手メーカーが製作する他、自作する個人も

液晶は自ら光を発さず、特定の波長の光のみを透過するフィルターだ。液晶ディスプレイは背面から白色光を照射し、これを液晶でフィルタリングすることによって映像を出力する。

透明ディスプレイとして利用する場合、背景の透過、不透過を精緻に切り替えられることが特徴だ。この点はLEDに勝る明確な利点といえる。

液晶自体は元から透明であるため、不透明なバックライトを排することができれば透明ディスプレイとなる。これを実現するためには幾つかの方法が考えられるだろう。

一つの方法は、単純にバックライトを取り除くことだ。シャープが生産する透明ディスプレイは光源を持たない。ディスプレイ自体が光源を搭載していなくても、明るい部屋で他からの光が十分に確保されていれば映像を映し出すには十分だ。逆にいえば暗室での利用には向かず、自発光型のLED方式と住み分けができている。

また、液晶部分とバックライトの間に空間を設ける方法もある。株式会社シルバーアイは、主にショーウィンドウ用途として透明ディスプレイの販売を開始した。

こちらの場合、ユーザーが映像越しに見ることができるのは液晶とバックライトの間の限られた空間のみとなる。シンプルな構造ゆえに非常に安価に生産できることが特徴だ。ネット上では、この方式の透明ディスプレイを低費用で自作する方法が多数紹介されている。

ホログラム|ソニーがプロトタイプを開発

Sonyは上記二つとまったく異なる方法で透明ディスプレイの実現を目指す。自社が有意性を持つホログラフィック光学素子を利用して映像を投影する方式だ。特定の光のみを強く拡散する特殊なスクリーンを使用することで、外光は素通りさせつつ、映像を表示させられる。

技術として大変レベルが高いが、ベースとなる部材が量産品ではないため、コストが割高となり市販はされていない。

まとめ|透明ディスプレイにしかできないこと

透明ディスプレイ技術は液晶を用いたものであれば20年以上前に既に実用化されていた。韓国LGの有機EL透明ディスプレイによって一躍注目を集めるようになったものの、その用途がない、またはコストに見合わないという問題は依然として存在する。

そもそもなぜ透明でなければならないのかという疑問に答えることも難しい。背面を見たければ、背面の情報をカメラで読み込み、映像として出力すればよい。裏からも前面と同じ情報が見えることが利点として挙げられる場合もあるが、これも裏面にディスプレイを張り付ければ解決する。

「透明ディスプレイにしかできないことは特にない」こと、そして「用途がない」という問題の解決のためにはもう一段階上の技術革新、または革新的用途の開拓が必要となるだろう。

例えば、LEDが自発光型の素子であることを活かして、ホログラムとはまた別の3次元映像出力が可能となれば、状況は大きく変わる。こうした研究には多くの企業が取り組んでいる。また、透明ディスプレイが3D CGを鑑賞するためのインテリアとして広く知られるようになれば、一般消費者にもリーチするかもしれない。


参考文献:

※1:透明ディスプレイ,シャープ(リンク
※2:透明液晶ディスプレイ, シルバーアイ(リンク
※3:YouTubeでの「透明ディスプレイ 自作」の検索結果(リンク
※4:高透明かつ高輝度な映像表示によって新しい体験を創出「透明スクリーンディスプレイ」, ソニー(リンク
※5:[SIGGRAPH]ソニー,360度表示可能な円筒形透明ホログラムディスプレイを発表, gamesindustry.biz(リンク
※6:透明パネルを用いた立体ディスプレイの開発, 中小企業庁Go-Techナビ(リンク
※7:NICTが裸眼立体視の透明ARディスプレー開発、小型化し視野を拡大, 日経クロステック(リンク



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  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

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