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チップレット相互接続のEliyanが資金調達、これまでの調達総額が144億円超に

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チップレット相互接続技術を有するEliyanは2024年8月13日、ベンチャーキャピタル(VC)のVentureTech Allianceから戦略的投資を受けたことを発表した。金額は非公表。

Eliyanは、2021年に設立したスタートアップで、本社はカリフォルニア州サンタクララにある。

創業者はRamin Fajadrad氏、Patrick Soheili氏、Syrus Ziai氏の3名で、いずれも半導体業界のベテランである。

画期的なダイツーダイ相互接続アーキテクチャを開発

Eliyanのコアテクノロジーである「NuLink」は、半導体の物理層の実装を担う設計技術。同社のソリューションは、革新的なチップレット向けDie-to-Die(D2D)相互接続アーキテクチャにより他の技術では実現できないパフォーマンス、電力、面積効率を達成している。

チップレットとは、大規模回路を個片化する技術のことである。大規模な回路を機能ごとに分割し、複数の小さなチップ(チップレット)として製造し、これらを組み合わせて、1つの大きなチップのように機能させることができる。また、D2Dの「Die」は、半導体チップの最小単位のこと。そして、D2D相互接続アーキテクチャは、同一パッケージ内の複数の半導体チップ間でデータを転送するための高性能な通信インターフェースである。

「NuLink」のD2D相互接続は、UCleおよびBoWに準拠している。UCIe (Universal Chiplet Interconnect Express) は、半導体チップレット間の相互接続を標準化するオープン規格である。一方、BoW  (Bunch of Wires)はチップレット間の相互接続基盤を定義付ける規格である。

2024年2月5日、同社はマルチダイアーキテクチャ向けでは業界最高性能である物理層ソリューションの設計工程の完了を発表した。このソリューションは、標準パッケージングを使用した 3nm プロセスで 64Gbps/バンプの帯域幅を達成。3nmプロセスとは、半導体製造における最先端の微細化技術である。「64Gbps/バンプ」とは、1つのバンプ(接続点)あたり64Gbpsのデータ転送速度を実現できることを意味する。つまり、非常に高密度かつ高速な接続が可能ということだ。

Eliyanが開発したチップ(Eliyanメディアキットより)

資金調達の目的は商業化プロセスと製品ラインの拡大

今回調達した具体的金額は明らかになっていないものの、VentureTech Allianceからの資金によりEliyanの調達総額は$100m(約144億円)を超えたとしている。

資金は、「営業、マーケティング、管理部門の企業インフラの拡大」「D2D、ダイツーメモリ(D2M)、チップツーチップ(C2C)相互接続の製品ラインの拡充」「カスタムおよび標準メモリとIOサブシステムチップレットのシリーズの開発」に活用されるという。

Eliyanの共同創業者兼CEOであるRamin Fajadrad氏は、次のようにコメントした。

「Eliyanは、先進的パッケージングと標準パッケージングの両方を活用した最先端の製造プロセスを開発した。実証した価値提案と技術的差別化は、AIチップエコシステム全体に波及している。世界有数のファウンドリやメモリサプライヤーから、このように広範囲にわたる財政的、戦略的サポートを受けることができてうれしく思う」




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  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

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