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ARスマートグラスのWaveOpticsが2020年プリズムアワードを受賞

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 2020年2月、サンフランシスコで開催されたPhotonics West Symposiumで、SPIE・The International Society for Optics and Photonics・Photonics Mediaが表彰するプリズムアワードが発表された。今回で第12回目となっており、光学市場において新しい光学およびフォトニクス製品を称える毎年開催のコンペティションである。

 アワードは、通信・エネルギー・ヘルスケア・ライフサイエンス・製造・品質コントロール・セーフティ&セキュリティ・交通・ビジョンテクノロジーの9分野のカテゴリに分かれており、1カテゴリあたり3社がファイナリストに選出されている。ファイナリストには大手企業も入っているが、アーリーステージのベンチャー企業や中小企業も含まれており、尖った技術や製品が選定されている。

 このプリズムアワード2020で、ARスマートグラスベンチャーであるWaveOptics社(英国)がVision Technologyカテゴリでの賞を受賞した。

 今回は、このWaveOptics社について解説したい。

精密ナノ構造導波路加工技術を持つWaveOptics社とは?

 WaveOptics社は、2014年に英国オックスフォードで設立されたスマートARグラスを開発するベンチャー企業である。2019年9月にSeriesCで39m$もの資金を調達することに成功。同社が狙うのは5Gとコネクテッドが普及する市場において、一般大衆ユーザーが低コストで、最高の画質を体験できる拡張現実ヘッドセットの商業化である。

 ガラスのレンズ表面に、光を効率的に集め、通る道とする精密ナノ構造の導波路を形成する技術を持つ。この技術を使うことで、より広角の視野と輝度の高いARディスプレイが実現できる。同社はこの技術を2次元瞳孔拡張と呼ばれる概念と説明している。

 一般大衆向けARグラスのラインナップは3種類あり、最も軽いモデルでわずか7g、FoV 30°、フルカラーの高画質が可能となっている。

 最初から大量生産を念頭に置いて設計されているため、標準的なナノインプリント法で製造が可能という。すでに54m$以上もの資金を調達しており、同分野で非常に有望視されている。同社に投資する投資家の中には、RBVC(Robert Bosch Venture Capital)も含まれる。

 なお、導波路レンズについては、2018年にAppleがAR用の導波路レンズを製造しているスタートアップAkonia Holographicsを買収したことでも話題になった。こうした光導波路ディスプレイは、今後のARヘッドセットやARスマートグラスにおいて重要な技術とされている。



  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

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