既存の車を自動運転化してアフターマーケット市場を狙うベンチャーGhost Locomotion
様々な企業が自動運転車両を開発しているが、実際に新車で市場に出てくる自動運転車の台数は、自動車市場全体での割合でいくとあまり多くない。
例えば富士キメラ総研が予測しているデータでは2030年にレベル3以上の生産台数でおおよそ1,000万台弱であるが、自動車全体の生産台数では1億台を超えるといわれる。つまり、流通している既存の自動車を後付けで自動運転化できるのであれば、非常に大きなマーケットを掴むことができる。
Ghost Locomotionが挑むのはそうした、既存自動車の自動運転化市場である。
Ghost Locomotionとは
2017年にシリコンバレーで設立された自動運転システムを開発するベンチャー企業である。同社は、8台のHDカメラを既存の自動車の前面、側面、背面に取り付けることで、既存の自動車を自動運転化する技術を開発している。
同社は2年間のステルス期間を経て、2019年にシリーズCで32m$を調達した。これまでの資金調達総額は63.7m$になるという。
同社が開発しているキットを自動車のトランクルームに設置し、車のCAN(コントロールエリアネットワーク)に接続をする。同社が狙うのはこれを後付けで行うことである。自動車のアフターマーケットにおいて、既存の自動車を自動運転化する。
ただし、Ghostが実現しようとしているのは、どのような道でも自動運転ができる完全自動運転とは異なる。同社の最初のターゲットは「高速道路」だ。高速道路という限定された環境に特化して自律走行のアルゴリズムを学習させることで、早期に市場へ出そうとしている。
「ソフトウェアシステムを完成させるための最初のステップは、問題を単純化することです。」と同社CEOのジョンヘイズ氏はブログで述べている。同社の主張は、多くの自動運転企業は、運転体験を端から端まで解決しようと試みており、それは非常に時間がかかる、というものだ。
同社のシステムが適用できるのは2012年以降に発売されたほとんどの車種となっており、キットとソフトウェアはわずか3,495$の初期費用+月額サブスクリプションモデルだ。元々2020年に発売開始を予定だったが、現在は2021年発売予定となっている。なお、実際の発売は規制面での承認を受けられるタイミング次第であるようだ。
アフターマーケットでの自動運転市場
冒頭述べたように、アフターマーケットにおける自動車の台数は膨大であり、そうした市場を対象にして自動運転システムを提供していくというのは興味深いアプローチだ。
同じような自動運転プラットフォームを展開しようとしている企業は他にも中国のDeeproute.aiなども挙げられるだろう。ただし、Deeproute.aiは自動運転レベル4の実現を狙ったプラットフォームであり、後からつけるセンサー群もカメラだけでなくLiDARも使う。
Ghostは高速道路の走行自動化に絞ることにより、センサー類もカメラのみとシンプルなシステム構造となっており、より短期的なビジネス化を狙ったものと言えるだろう。
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