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リチウムイオン電池向を大きく改善する可能性を秘めたシリコン負極材を開発するSILA Nanotechnologies

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Volkswagen・QuantumScapeを筆頭に、車載向け電池は全固体電池が注目されているが、まだ当面市場はリチウムイオン電池を中心に動いていく。

そのリチウムイオン電池においても、まだ性能面での向上余地は十分にあり、可能性の1つはシリコンベースの負極材だ。SILA Nanotechnologiesはそんなシリコンベース負極材を開発する米国のベンチャー企業である。

シリコンベース負極材を開発するSILA Technologiesとは

同社は2011年創業のLIB向け負極材を開発製造するベンチャー企業だ。創業者は元テスラの開発者で、テスラ在籍時にLIBの課題が大きいこととそのポテンシャルに目をつけ、起業したという。

Daimlerをリードインベスターとして170m$もの資金を2019年に調達しており、これまでの資金調達総額は285m$にも上る。現在はシリーズEが完了しており、レイターステージのベンチャー企業だ。

同社のシリコン負極材の優位性

シリコン負極材は、通常のグラファイト系の負極材に変わる、シリコンベースの負極材である。同社によると、負極材を黒鉛系から同社のシリコン負極材に変えることで、LIB全体として、エネルギー密度を20%改善できるとしており、それによって使用するセルが20%低減でき、コストやサイズを改善する。同社はさらに、既存の最先端のLIBに対して40%までの改善ポテンシャルがあるという

通常、負極材にシリコンベースを使うと、負極材として大きな容量を持つことができるが、炭素と比較して原子あたりのリチウムイオン吸蔵量が大きいために、充電による体積膨張が著しく、電池に問題を起こしてしまうことになる。同社は、シリコンナノ粒子を剛性のあるシェルに詰めることで、バッテリーの電解質との相互作用を損なうことから保護するメカニズムでこの問題を解決しようとしている。

同社のバッテリー材料は2020年末までに消費者向けデバイス・家電製品に導入される見込みだということであった(シリーズE調達時の2019年4月時点の発表)。ただし、現時点で家電製品に搭載されたとの発表はまだ無い。

Daimlerと共同で紹介動画を発表

SILA Nanotechnologiesは、2020年12月17日、ダイムラーとの次世代EVに関する取り組みについて共同で紹介動画を発表している。

この動画内ではCEOへのインタビューという形でSILAの概要が紹介されており、また2021年に発売するとされるダイムラーの高級EV車EQSはWLTPで700kmの航続距離となることが言及されている。EQSでSILAの材料が使われるかどうかは厳密には不明だが、同じ動画の中で紹介されており、可能性を匂わせている。

(動画のリンクはこちら


ニッケルリッチ正極やシリコン負極、リチウム金属などの先進リチウムイオン電池に関する技術動向の全体像についてはこちらの記事も参考。

参考:(特集)車載向け次世代電池の技術開発動向① ~先進リチウムイオン電池~


電池にとって重要となる、フォルクスワーゲンの電池ロードマップ発表の内容についても整理したのでご参考。

参考:Volkswagenが2030年までの電池ロードマップを公開、さらにEVを強化へ



  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

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