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データセンターにヒントを得た水素生産システム開発のFourier EarthがシリーズAで28億円を調達。Apple元社員2人により創業

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「オンサイト」「オンデマンド」の水素生産システムを開発する米Fourier Earthは2025年4月2日、シリーズA資金調達ラウンドでの$18.5m(約28億円)の確保を発表した。

FourierはともにApple出身のSiva Yellamraju CEOとAli-Amir Aldan氏によって2022年、シリコンバレーのパロアルトで設立。計算を分散して行うデータセンターのサーバーにヒントを得た方法で、水素を生産するシステムを開発する。

オンサイト・オンデマンドでの水素生産を目指す

発電や自動車、船舶、航空機などを動かすためのクリーンエネルギーとして期待される、水素。しかし、水の分解に使う電気が仮にクリーンエネルギーだとしても大量の電力を必要とするため、水素生産に取り組むスタートアップには製造時のカーボンニュートラルだけでなく、効率化も求められる。

ATXが最近報じた中では、製鉄プロセスで発生するCO2を活用するUtility Global(米) 、Capillary-fed electrolysisという電解装置を開発したHysata(オーストラリア)が、それに当てはまる具体例となるだろう。

参考記事:排ガスから水素を生産するUtility GlobalがシリーズCで78億円を調達。ArcelorMittal のCVCが出資
参考記事:HysataがシリーズBで164億円を調達、高効率電解装置で「グリーン水素」を作り出す

そしてFourierが進めるのが、水素を「必要な場所(オンサイト)」で「必要なとき(オンデマンド)」に提供できるシステムの開発だ。

原料となる水をまず、脱イオン化。それをモジュールに送り電気分解するが、モジュール内は20程度のセルに分けられており、ソフトウエアによって水や電力の供給を調整、水素生産を効率化する仕組みだ。CEOのYellamraju 氏が本件を報じたTechCrunchに語ったところによると、この仕組みはデータセンターのサーバーやTeslaのバッテリーマネジメントシステムをヒントにしたものだという。

さらに、オンサイトの水素生産を実現するため、システムの大きさもサーバーラック2個程度となっている。

米電子工業会(EIA)によるサーバーラックの規格を基にすると、1個の大きさは幅約483ミリメートル×高さ約1890〜2160ミリメートル×奥行1000ミリメートル前後(pixabay)

なお、FourierはシリーズAの調達までステルス状態(存在を秘匿したまま起業すること)にあった。そのため、同社の動向がニュースとなるのはこれが初めてだ。

AirbusのCVCも対応

シリーズAは2社のベンチャーキャピタル(VC)が主導。他、Airbusのコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)であるAirbus Venturesなどが応じた。

資金は、製造の拡大、商業展開の加速、エンジニアリングの拡大に利用するとしている。

プレスリリースには経営陣のコメントは掲載されず、代わりに「困難な問題を解決し、エネルギーの未来を形づくることに情熱を抱くエンジニア、イノベーター、問題解決者であれば、ぜひご連絡ください」と新たな人材を募る文言が記された。




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  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

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