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ナトリウムイオン電池開発のMoonwattがシードラウンドで12億5000万円を調達。Tesla出身者3人がオランダで立ち上げ

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ナトリウムイオン電池を開発するオランダのスタートアップ、Moonwattが2025年3月初頭、シードラウンドで€8m(約12億5000万円、約$8.3m)を調達したと欧米メディアが報じている。同社のValentin Rota共同創業者兼最高商務責任者(CMO)もメディアのインタビューに応じており、事実であるようだ。

MoonwattはRota氏の他、Zukui Hu CEO、Guillaume Mancini CTOのTesla出身者3人によって2024年、設立。アムステルダムに本拠を置く。

太陽光発電の設備利用率80パーセントが目標

再生可能エネルギーの利用には、さまざまな課題がある。発電の効率が芳しくない場合がある、気象条件に左右される方法ではどれくらい発電できるかが見積もりにくい、そのために電力需要に沿った供給が難しい、などだ。

こうした課題を解決する手段の一つが、蓄電である。需要のないときに大量の発電をしてしまっても、電気を貯めておければ必要なタイミングで供給が可能となる。

そしてMoonwattは、蓄電により再生可能エネルギーを可能な限り無駄なく利用するためのソリューション開発を目指すスタートアップだ。具体的には、ナトリウムイオン電池を開発し、ソフトウエアによってさらなる効率的な発電、蓄電、供給につなげる。また、太陽光発電に特化した蓄電であることを明言する。

ナトリウムイオン電池というと、2025年3月にエレコムがナトリウムイオンモバイルバッテリーを発表した。エレコムは本プロダクトを「世界初」と訴求し、たしかにモバイルバッテリー、消費者向けのナトリウムイオン電池としては、最初期のものといっても差し支えないだろう。

一方、蓄電向けの大型ナトリウムイオン電池としては、日本ガイシが開発したNAS電池がすでに存在していた。

Moonwattは技術的な詳細を明らかにしてないものの、再生可能エネルギーの蓄電用途という点ではNAS電池と共通する。

ただし、前出のRota氏はソフトウエアによる効率化で太陽光発電資産の平均収益率(IRR)を20パーセント(現在は8〜12パーセント程度)まで引き上げ、設備利用率も80パーセントを目指すと語っており、こうしたMoonwattのコミットメントは特筆すべき点といえるだろう。これらの目標は、統合型アーキテクチャーで複数の発電所を統合的に運用することで、達成するというのが同社の考えだ。

顧客も投資に応じた模様

本件を報じたTechCrunchによると、シードラウンドはベンチャーキャピタル(VC)と投資銀行が主導。また、実名は明かされていないものの、Moonwattの顧客も応じたという。

資金を元に2026年、欧州内でパイロット設備をつくり、2027年の商業展開を目指す。




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  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

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