Daqus Energyがシードラウンドで8億7000万円確保を目指す、と米報道。リチウムイオン電池の新材料を開発するスタートアップ

リチウムイオン電池に関する新材料を開発する米スタートアップ、Daqus Energyがシードラウンドで総額$6m(約8億7000万円)の確保を目指していると2025年3月10日、TechCrunchが報じた。一方、公式発表はなく、スタートアップに関するデータベースサービスでも$6mに満たない調達額となっていることから、4月前半時点では達成していない模様だ。
Daqus は、テキサス大学准教授を務めたHarish Banda CEOと、マサチューセッツ工科大学(MIT)およびプリンストン大学のMircea Dincă 教授によって、2024年9月、マサチューセッツで設立。今回の報道まで、ステルス状態(存在を秘匿としたまま起業すること)を貫いていた。
特にコスト面で期待のある「TAQ正極」
Daqusのウェブサイトにアクセスすると、以下の電気自動車(EV)とガソリン車の比較がまず目に入る。
| 車両価格(SUV) | 航続距離 | 冬季における航続距離の減少 |
EV | $53k | 200〜400マイル | -40パーセント |
ガソリン車 | $36k | 350〜500マイル | -10パーセント |
その上で、今日のEVはガソリン車と比較して「より多く支払えば、より少なく得られる」ものになっていると訴え、自社のパーパスとして「誰もが望むバッテリーをつくる:より良く、より安く」と掲げる。
安く効率の良いリチウムイオン電池をつくるため、Daqusが開発するのが、ビステトラアミノベンゾキノン(TAQ)という材料による正極だ。
Daqusによると、現状のリチウムイオン電池で正極として使われるニッケルマンガンコバルト(NMC、日本国内では「三元系」とも呼ばれる)やリン酸鉄(LFP)は、重さでもコストでもバッテリー全体の半分前後を占める。このうち、ニッケルの2025年4月初頭に報じられた価格をキログラム換算すると約$14.3。あくまでも市場価格であるため、中間ユーザーが入手するための価格となると、さらに高額になることも考えられる。
一方、Daqusは現在、TAQの原料となる2種の分子を1キログラムあたり$1で入手。量産化後のスケールメリットを考えると、さらなるコスト抑制も期待できるだろう。
また、TAQ正極をつくるための合成で必要となる熱は、120度だという。NMCやLFPより700〜800度低い温度で合成が可能だと、Daqusは強調する。
この他、充放電回数や使用開始後の容量維持率でのメリットもDaqusは挙げているが、同社がオフィシャルサイトで示した航続距離に関する情報は、公式発表、報道から見つけられなかった。この点で現行品に劣らない競争力を得るには、今後の開発にもかかっているといえるだろう。
個人投資家も対応
進行中のシードラウンドは、ベンチャーキャピタル(VC)が主導。さらに、匿名の個人投資家も応じているという。
資金の使途は特段、明らかにされていないものの、Daqusの現状からさらなる開発やプロトタイプの製作などが考えられる。
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