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ハプティクス(触覚)グローブのHaptXが最新モデルを販売開始

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米国カリフォルニア州に拠点を置くハプティクスベンチャー企業のHaptXは、2021年1月、同社が開発していた触覚グローブのHaptX Gloves DK2をリリースした。

HaptXの触覚グローブとは

HaptXの触覚グローブは、ユーザーがアクチュエーターを備えたグローブを身に着けて、例えばVRと連動させて仮想空間上で物に触れた際に触覚フィードバックを返したり、リモートでのロボット操作などで、操作対象となるロボットハンドが物を掴んだ時の触覚を、グローブ上でユーザーにフィードバックを行うことができる。

https://www.youtube.com/watch?v=NJwFG0EoS7E&feature=emb_title
同社公開のYoutubeへの直リンク

特徴はマイクロ流体システムによるリアルな触感

同社の特徴は、特許取得済みのマイクロ流体システムにある。現状のほとんどの触覚フィードバックは振動によって行われている(ゲーム機やVRで使われている)。一方で、同社は微小なマイクロ流体アクチュエーターをやわらかいシリコンパネルに敷き詰めたモジュールを使い、グローブに織り込んでいる。このソフトタッチなアクチュエーターが指の様々なポイントを押すことで、繊細な触覚をフィードバックする。指の表面はこのアクチュエーターによって最大2mm押されることになる。1つのグローブで130ポイント以上のフィードバックが可能という。

また、軽量フォースフィードバック外骨格は、最大40ポンドの動的フォースフィードバックを実現する(1本の指あたり8ポンド/ 35Nとなる)。このフォースフィードバックとは、入力に反応して振動や力を手に加える機能である。この機能は高出力密度の空気圧アクチュエータにより実現する。
注)この機能により、手の平の表面への触覚だけでなく、手にかかる力、例えば仮想空間上で重いものを持った時に、その重みにより手にかかる力を表現する、といったことを実現できると考えられる。

HaptXグローブには、正確なハンドトラッキング機能も組み込まれている。これは、独自の磁気モーションキャプチャシステムにより、サブミリ単位の精度となる30DoFでのモーショントラッキングに対応している。

同社は今回のHaptX Gloves DK2を開発するにあたり、2年間を費やし、初期の製品モデルに対してサイズと重量を削減し、フィット感と人間工学による触覚体験の改善、ルームスケールでのVRサポートの有効化、触覚の忠実度の向上等を実現した。

過去にCESでも注目

HaptXは過去にUploadVRによるCES2020のBest in Showで賞も受賞している。これはAR/VR領域に特化したコンペティションで、ソーシャルメディアで一般消費者が投票を行うもの。以下の動画は当時のインタビュー動画である。(製品は前バージョンのものであることに注意)

https://www.youtube.com/watch?v=0Lgyvr7vsJs
同社公開のYoutubeへの直リンク

HaptXは日本でも発売を開始しており、総合商社の株式会社アスクが代理店として取り扱いを開始したことが発表されている。

(今回参考のプレスリリースはこちら


ー 技術アナリストの目 -
HaptXはCES2020でエウレカパークでブース出展をしており、当時筆者もブースで見た記憶があります。ロボットハンドを使ったデモンストレーションはインパクトがあり、人だかりができていました。触覚フィードバックのベンチャーは、振動での表現だけでなく、様々な触感を表現する方向で技術が深まりつつあります。同社のマイクロ流体システムによる手のひらでの繊細な触覚表現は、VRやリモートロボットの領域で独自のポジションを築こうとしています。

  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

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