自動運転のAuroraがLiDARオンチップのOURS Technologyを買収
自動運転システムを開発しているベンチャー企業のAurora Innovation Incが、LiDAR-on-a-ChipのOURS Technologyを買収したことを、2021年2月26日に発表した。
AuroraによるOURSの買収背景
Auroraは2019年にFMCW LiDARのBlackmoreを買収
Auroraは2019年にFMCW(周波数変調連続波)LiDARを開発していたベンチャー企業のBlackmoreを買収している。現在はBlackmoreのページは無く、Auroraの内部に統合されているが、当時のBlackmoreの発表も遡ってみよう。
Blackmoreは2016年に設立されたベンチャー企業で、創業前から続くこのFM技術の研究開発は10年以上費やされて実用化された。同社は2019年当時に2種類のFMCW LiDARを発表していた。
このLiDARはFMCWの利点を活かし、検出距離450mを超える長距離性能(前提となる対象物反射率は不明)、瞬間的な速度データの測定が可能となっており、FOV120°×30°の広視野角、小型のノートPCと同様の消費電力とサイズを実現している。
速度は最大150m/s(335mph)までの速度で移動する対象物において、0.1m/秒までの精度での正確な速度測定が可能だ。なお、この速度測定まで可能なものを4D LiDARという。
点群も高精細なスペックとなっており、240万 pts/sを実現。このLiDARは2019年第2四半期から20,000ドル未満で顧客に出荷されるとしていた。
このBlackmoreのLiDARは、その後Auroraによって買収された後、2020年8月に次世代テスト車両における長距離用知覚センサ「FirstLight Lidar」として発表された。
スケーラビリティ(小型化・低消費電力化)が必要なフェーズへ
そのような中で、今回のLiDAR-on-a-Chipのベンチャー企業の買収に至ったのは、この長距離FMCW LiDARにおいて、スケーラビリティが必要なフェーズに入ったことが背景にある。Auroraとしては、当初はパフォーマンスに焦点をあてて開発を進めてきたが、今後はスケーリング(規模拡大)する時であると発表している。
高性能なスペックを維持しながらより小さいサイズで、より低コストで生産できるようにするために、1つのチップに統合することになったという。
OURSの技術で何が変わるか
OURS Technologyとは
OURS Technologyは、2017年にUC Berkeley ASPIRE labからスピンオフして設立されたベンチャーで、シリコンバレーのVCによって支援されたシリーズAの企業であった(Linkedinをたどると、おおよそ社員は15名程度であるようだ)。同社のCEOであったGreg Blanck氏は、シリコンバレーの半導体大手企業のCypressでVice President Engineeringを務めていた人物。
OURSもFMCW LiDARを開発しており、開発当初から量産化を見据えてシリコンフォトニクスの技術でLiDAR-on-a-Chipによる低コスト生産を指向していた。
この技術により、ソリッドステートビームステアリングシステムやFMCWトランシーバーなどの必要なコンポーネントを、すべて1つのパッケージにまとめることができるようになる。
サイズ1/10の小型化を実現
Auroraが今回発表したところによると、シリコンフォトニクスの技術を持つOURS独自の設計および開発プロセスにより、3年後には第4世代のLiDARを実用化できる見込みだという。この第4世代のLiDARは非常に小さく、現行サイズの10分の1を実現し、また安価に、大量生産をすることができるようになる。
また、OURSの特徴の1つにカスタマイズがあるとしており、今後新しい機能を追加していく上でも、LiDARを細かく制御する機能を実現できると同時に、適切なパートナーのセットと連携するための商業的な柔軟性も保つことができる。
(今回参考のプレスリリースはこちら)
MEMS LiDARやFMCW LiDAR、フェーズドアレイなど、方式別の技術動向や特徴について知りたい方はこちらも参考。
参考記事:(特集) 車載LiDARの技術動向 ~種類・方式の特徴と全体像~
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