フィンランドのGlucoModicumが非侵襲グルコースモニタリング技術について発表
4月20日、フィンランドヘルシンキに拠点を構えるベンチャー企業のGlucoModicumが、無針で非侵襲のグルコースモニタリング技術について、その開発状況について発表した。
ヘルシンキ大学のスピンオフベンチャー
GlucoModicumは、ヘルシンキ大学のスピンアウトとして2018年に設立されたベンチャー企業だ。個人のバイオマーカーモニタリングのための画期的なソリューションとして、針(またはマイクロニードルの類)を使わずに、非侵襲でグルコースモニタリングを行う技術を開発している。
同社の科学顧問やCMO(チーフメディカルオフィサー)は、ヘルシンキ大学の理事長やヘルシンキ大学病院(※1)のメディカルドクターで構成されている。
※1 ヘルシンキ大学病院(HUS)は、ヨーロッパを代表する医療機関の1つであり、HUSは23もの異なる病院で構成されている一大病院グループ。HUSは、年間200万人以上の患者の診察を含め、毎年54万人以上の患者を治療している。
独自の電磁流体力学技術で間質液からグルコース濃度を測定
同社の技術は、ヘルシンキ大学で研究されていた独自の電磁流体力学技術(MHD:Magnetohydrodynamics)に基づいている。この技術は、2016年にヘルシンキ大学での科学研究プロジェクトの一環として発見され、GlucoModicumで事業化を目指すこととなった。
グルコースは血中から直接測定するのではなく、現在市場で使われているマイクロニードル型のグルコースセンサと同様に、間質液のグルコース濃度を測定する。間質液は皮膚の表皮と毛細血管を挟んで存在しており、毛細血管を流れるグルコースはこの間質液に移動する。間質液のグルコース濃度は血中グルコース濃度と高い相関があることが明らかとなっており、非侵襲・低侵襲センサを開発する多くの企業はこの間質液内のグルコース濃度を測定し、血糖値を算出している。
同社の技術は、2つの電極を配置したセンサーに電流を流すことで、イオン性分子を膜や体内組織に浸透させる「イオントフォレーシス」のメカニズムを使っている。この技術は近年、ドラッグデリバリーシステムなどで使われている技術の一種であり、通常は特定薬物を経皮に吸収させるのを促進する。そして、同社は浸透ではなくその逆方向で、体内のグルコース等の分析物を抽出する「逆」イオントフォレーシスを独自に発展させ、複数の分析物を検出する。
なお、この技術方式は、皮膚と電極等との間の不十分または不安定な電気的または機械的接触によって容易に精度が乱れることから、動き等が発生しにくい指の近位および中指骨の側面等に取り付けることが望ましいとしている。
プロトタイプで50人規模の臨床試験を実施
2019年に、ヘルシンキ大学病院(HUS)は、GlucoModicumの工業用プロトタイプを2型糖尿病患者の臨床試験で使用することを承認し、フィンランドの医薬品および医療機器庁(FIMEA 2)の検証を経て、50人規模の臨床試験を実施している。
さらに、商用グレードの医療機器としての開発を進め、技術を小型化・製品化し、製品名「タリスマン」として現在開発を進めている。このタリスマンはコインサイズのセンサーとなっており、手首に巻くバンドに取り付けることができる仕様だ。
同社CTOのDr. Alejandro García氏はこう述べている。
「これらの臨床試験の結果は、非侵襲でバイオマーカーを測定できる技術の妥当性をします。そして、2型糖尿病に苦しむ人々に向けての大きな一歩です。グルコースやその他の体内分析物をモニタリングすることを可能にするGlucoModicumのプラットフォームの強みを示しています。」
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2021年に注目すべき、デジタルヘルスの健康・ヘルスケアモニタリングや解析技術の動向について整理した。技術の全体像について知りたい人はこちら。
参考:(特集)2021年デジタルヘルスの技術動向 ~健康・ヘルスケアモニタリング / 解析~
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参考文献:
1) WO2020188141 - DEVICE FOR SAMPLING ONE OR MORE ANALYTES
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