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IoT・ウェアラブルイノベーションワールドカップのTOP15

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2021年4月27〜29日に、ウェアラブルテクノロジーカンファレンス2021 EUROPEがデジタル開催された。そしてカンファレンスの中で、第12回IoT/Wearable Technologyイノベーションワールドカップが開催され、TOP15のプレーヤーが発表された。

IoT/Wearable Technologyイノベーションワールドカップとは

このIoT/WT(ウェアラブル技術)イノベーションワールドカップTOP15は、世界からの応募600を超える技術を評価して選出されたもの。応募はスタートアップや中小企業に限定されており、IoTとウェアラブルハイテク企業が対象分野となっている。

スポンサーにはSTMicroelectronics、EBV Elektronik、Microtronics、AiQ Smart Clothing、Würth Elektronikらが含まれており、技術の審査を行う。

今回選定されたTOP15は以下の顔ぶれとなっている。この記事ではこの15社についての概要を紹介していこう。

IoT/WTイノベーションワールドカップTOP15

筆者調査により作成
★は15社の中でも、World´s TOP5 Wearable Innovators 2021 and EBV IOT HERO 2021に選定された企業

IDUN Technologies AG:生体センシングのためのポリマー電極

IDUN Technologies AGはスイスのベンチャー企業だ。生体センシングのためのポリマー電極を開発している。現在はまだアーリーステージであるが、Swiss Startup Award TOP100にも2020年に選出されており、Horizon2020の中小企業向け助成プログラムでも採択されている。

同社のポリマー電極は様々なウェアラブルデバイスに適用可能であり、ECG(心電)やEEG(脳波)を測定する研究で活用されている。また、同社の電極は興味深い形でも利用が模索されており、開発されたドライ電極を搭載したインイヤーデバイスは、耳の中から脳波を測定することで、従来の頭皮から測定するタイプの脳波測定デバイスと同等の精度が可能であることを示唆しているという。

Tap Systems:ウェアラブルキーボードインターフェース

5本の指にはめて使うことができるウェアラブルキーボードインターフェースを開発・販売しているベンチャー企業である。このデバイスは熱可塑性ポリウレタン(TPU)で作られた柔軟性を持ち、各指輪には3軸加速度計を搭載、そして1つの6軸IMU(慣性計測ユニット:3軸の回転方向と加速度を測定することで姿勢をモニタリング)で、タップジェスチャーを認識する。

どのようなものかは、下記の動画を見ていただきたい。指にはめるタップ用ウェアラブルデバイスを使って、キーボードレスでキーボード操作を行うことができる。

このデバイスは現在199$で購入が可能となっている。

https://www.youtube.com/watch?v=gtSQT8lS4vo
同社公開の動画への直リンク

UWIS Oy:ダイバー向け水中ナビゲーションシステム

UWIS Oyは2014年に設立された、ダイバー向けの水中ナビゲーションシステムを開発しているベンチャー企業だ。元々は水中捜索救助任務を支援するために開発されたこのナビゲーションシステムは、三角測量の原理を利用した水中ナビゲーション、通信、監視システムとなっている。

このナビゲーションシステムにより、ダイバーの水中位置を数メートルの精度で決定することができる。また、事前に設定されたメッセージシステムを介して、ダイビング参加者と水面にいる人との間の通信を可能にする。

ダイビングデータはブイを介して水面に中継され、UWISトラッカーソフトウェアを使用してダイバーの進行状況をリアルタイムで追跡できる。このシステムは、深さ150メートルの1000メートルの領域で、最大100人のダイバーを同時に追跡できるという。

https://www.youtube.com/watch?v=KaSPiFNe_Z0
同社公開の動画への直リンク

WearWorks:視覚障がい者向け触覚フィードバックウェアラブル

手首に巻くスマートウォッチ風のウェアラブルデバイスで、障がい者が外を歩行したり、障がい者ランナーが外を走る際に、目的地へ行くための経路からズレたら振動フィードバックで経路からズレていることをユーザーに認識させるデバイスである。

現在、パイロットプロジェクト中であり、2021年6月から正式に販売が開始する予定だ。デバイスは249$で販売される(事前予約すると179$になる)。

https://www.youtube.com/watch?v=eQjaoCpZGYM
同社公開の動画への直リンク

このデバイスは2017年時点ではすでに初期プロトタイプとして、視覚障害のあるマラソンランナーがニューヨークシティマラソンを走るのに使われて、その機能性が検証されていた。GPSとジャイロを使い、位置と方向を特定しながら、スマートフォン上で入力された目的地に到着するために設定される経路を触覚フィードバックを使ってナビゲーションする。

Janitri:ウェアラブル胎児モニタリング

Janitriは2016年設立のインドのベンチャー企業で、様々なウェアラブルデバイスを使ったモニタリングシステムを開発している。同社が開発した製品の1つであるKEYARは、手頃な価格で使いやすいパッチベースのウェアラブル母体胎児モニタリングデバイスで、分娩期間に使用する(分娩とは、赤ちゃんが母体から完全に排出・娩出されること)。

母親と新生児の死亡の99%以上は、インド、アフリカなどの発展途上国で発生していることから、特に同社はこうした新興国向けに、母親と胎児の両方の状態をモニタリングして、適切な処置を可能にする。またこのデバイスは、モバイルアプリケーションと連携し、インテリジェントアラートとリモートモニタリングを実現。陣痛段階で母親と胎児を監視するのを支援するスタッフの看護師/助産師/医師向けに役立つ情報を提供する。

https://www.youtube.com/watch?v=TmA6r6jMk24
Falling Walls Foundation公開の動画への直リンク

MDCN Technologies:脳刺激ウェアラブルによるストレス軽減・リラクゼーション

脳に神経刺激を与えることで睡眠改善やリラクゼーションを行うデバイスNeoRhythmを開発しているベンチャー企業である。昨年12月に正式にリリースされたばかりであるが、昨年プレスリリース時で、これまでに累積1万1,000台が市場に出回っている。

電車に乗っているときに感じる揺れのリズムが、リラクゼーションと睡眠を促進する脳波の状態と一致することから、同社が開発したデバイスを通して脳が同期をする周波数を使い脳の状態を誘導し、望ましい精神状態になるために最適な環境を作り出す。

https://www.youtube.com/watch?v=kEQ3zAjjVmw&t=6s
Omnipemf公開の動画への直リンク

詳細はこちらでも紹介をしている。

参考:脳に神経刺激を与えることで睡眠改善やリラクゼーションを行うデバイスNeoRhythmがリリース

Mindpax:精神障害向けデジタルソリューション

同社はパーソナルな健康や精神状態にとって重要なバイオマーカーをモニタリングするプラットフォームを構築することを目的に、2015年に設立された。その後、精神疾患やADHDの早期診断など、やや的を絞り現在ソリューションを開発している。

まだ研究開発中であり、同社がどのような製品を手掛けているのかに関する情報は少ないが、手首につける加速度センサーであるアクチグラフを用いて日中の活動状況と睡眠状態を計測し、データを解析してモバイルアプリやウェブアプリ上で表示を行う。

例えば、Mindpaxシステムを使用したプロジェクトとして、ロンドンのKing's Colleagueと子供のADHDとADDの早期診断に焦点を当てた共同研究が2020年に開始している。

https://www.youtube.com/watch?v=fc5aISJ-3Rs
同社公開の動画への直リンク

PKVitality:連続グルコースモニタリング

同社は2013年に設立されたベンチャー企業で、スマートウォッチに組み込まれた使い捨て型のマイクロニードルバイオセンサで、連続的にグルコースをモニタリングするデバイスを開発している。このバイオセンサは7日間連続して使用することができ、簡単に取り換えることができる。

https://www.youtube.com/watch?v=4zz6rDdbdZY
同社公開の動画への直リンク

まだアーリーステージであるが、この1~2年で様々な賞を受賞し、メディアでも取り上げられている企業だ。

こちらでより詳細に整理をしている。

参考:スマートウォッチ×マイクロニードルでグルコースを測るフランスのPKvitality

BeFC:紙ベースの生体酵素燃料電池

同社は使い捨て医療機器デバイスなどの、ディスポーザブルデバイスで使うための、紙ベースの生体酵素燃料電池を開発しているアーリーステージのベンチャー企業だ。現在の電池はリサイクルが難しく、環境にとって毒性があるものが多い。

安全で環境に優しいデバイスを実現するために、BeFCは紙ベースの超薄型、柔軟で小型の生体酵素燃料電池システムを開発。化学的、または高価な貴金属触媒の代わりに生物学的触媒を使用して、グルコースや酸素などの天然基質を電気に変換する。

同社のコインセルは①カーボン電気接点、②カーボン電極、③マイクロ流体セルロース層、④カーボン電極、⑤グラファイト電気接点の主に5層から構成されている。超極薄のこのコイン電池は、低電力の用途で利用が可能となっている。

https://www.youtube.com/watch?v=ROLC83U-tH4
同社公開の動画への直リンク

Bluetentacles:灌漑管理プラットフォーム

Bluetentaclesは農家が精密灌漑を行うためのモニタリングシステムを提供している。

作物の天候や環境条件に関する特定のデータを受け取り、作物を育てるニーズに基づいて灌漑を計画することができる。センサーシステムは、雨量計と蒸発散量計算用のすべてのセンサー(気温、相対湿度、日射量、風速計)を搭載し、Wi-Fi、イーサネット、または3Gまたは4Gセルラーネットワークを介して、フィールド内の状態をモニタリング。状態に応じて、灌漑バルブを開閉し、精密灌漑を実現する。

https://www.youtube.com/watch?v=J0JDSjVIMUY
NOI Techpark公開の動画への直リンク

Shayp:水漏れ検出AI

Shaypは配管システムをリモートでモニタリングすることで、水漏れをAIで検出し、水道料金を最適化するシステムを開発しているベンチャー企業だ。同社が狙っているのは水に関するスマートメーターとしてのゴールドスタンダードである。

同社の主張によると、住宅、建物、インフラに配水されている飲料水の35%は、水漏れのために無駄になっており、水漏れによる損失分は定常的に各水道料金の10〜50%を占めているという。

同社が開発したアルゴリズムを使うことで、配管システムの通常のフローパターンを段階的に学習し、通常の水の消費量と漏れによる消費量を分離して評価することができる。特別なセンサーは不要で、既存の水道メーターに接続するためのルーターの取り付けのみで導入することができる点も特徴だ。

https://www.youtube.com/watch?v=hZR7N43q1Vc
同社公開の動画への直リンク

SunSense AS:ウェアラブルUVトラッカー

SunSense ASは腕に取り付けるタイプのウェアラブルUVトラッカーを開発しているベンチャー企業だ。

皮膚がんなどの深刻な病気のリスクを最小限に抑え、ユーザーが安全に太陽を楽しむことができるようにすることを目指して、同社はこのデバイスを開発した。

ウェアラブルデバイスに組み込まれたUVセンサーがリアルタイムで太陽光から皮膚に照射されるUVの量を計測。専用のアプリで表示を行う。また、SunSenseアプリ内で太陽の下での一日の計画を立てることができる。アプリを通して太陽からのUVへの露出状態に関する最新情報をリアルタイムで入手することが可能となっており、。2時間ごとに、日焼け止めの再塗布に関するリマインダーが届く。毎日の最大紫外線暴露量に達すると、アラート通知を受け取る。

Ease:線維筋痛症候群向けウェアラブル衣服

Easeは、線維筋痛症候群の患者向けに、慢性的な痛みを和らげるために設計されたウェアラブル経皮的電気神経刺激(TENS)衣服デバイスを開発している。

コントロールデバイスを専用の衣服に取り付けることで、衣服に備え付けられている電極に電流を流すことで、痛みを和らげる。電流の強さはスマートフォンアプリで調整することができ、また電極のついた専用衣服は洗濯機に入れて30℃で洗い、繰り返し使うことができる。

現時点ではシードステージであり、まだ詳細な情報が明かされていない。

Articulate Labs:膝リハビリ支援用神経筋電気刺激ウェアラブル

Articulate Labsはテキサス州ダラスを拠点とするスタートアップで、神経電気刺激により、膝のリハビリを支援するデバイスを開発している。

同社によると、患者が静止しているときにのみ使用できる他のウェアラブル神経筋電気刺激(NMES)デバイスとは異なり、同社が開発するデバイスKneeStimは、患者が通常の活動を行っているときにも治療を提供することができる点が特徴だという。

このKneeStimは、モーショントラッキングテクノロジーと高度な分析により、個人の歩行に合わせたパーソナライズされた神経筋電気刺激(NMES)を行うことができる。機械学習、モーショントラッキングソフトウェア、関節モデリングオペレーティングシステムの独自の組み合わせにより、個人の歩行と関節の状態にリアルタイムで反応する、調整された電気刺激が可能となっている。

https://www.youtube.com/watch?v=HOcioCp1bX0
Texas Medical Center公開の動画への直リンク

Thread in Motion:生産ライン管理用スマートグローブ

Thread in Motionは、IIoT(Industrial IoT)向けのスマートウェアラブルテクノロジーに特化したベンチャー企業。生産ライン管理用のスマートグローブを開発しており、FordやFiat、Renault、メルセデスベンツなどの自動車大手企業や、物流大手のCEVA、ブリジストンなども同社の顧客であるという。

手にはめることができる小型のウェアラブルデバイスは、1.5インチの小型モニタと小型のキーパッドを装備。作業の邪魔にならず、作業が完了したことをその場で登録することができる。バーコードの読み取りも片手で操作可能となっている。

この多機能なウェアラブルデバイスを使い、倉庫や生産ラインの効率化を行う。

https://www.youtube.com/watch?v=i78XJNO7knc
同社公開の動画への直リンク
メルセデスベンツでの導入事例

 

今回参考のプレスリリースはこちら


【世界のウェアラブルデバイスやIoT技術の調査に興味がある方】

今回取り上げたような世界のウェアラブルデバイスのベンチマーク・定点観測調査や、Industry4.0に活用できるIIoTなどの技術動向調査、世界のベンチャー企業調査に興味がある方はこちらを参考。

グローバル技術動向調査:詳細へ


  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

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