シェブロン・ペプシコらと提携する汗センサのEpicore Biosystems
汗は様々なバイオマーカーを含んでおり、以前より様々な大学研究機関やベンチャー企業が生体センシングの実用化を目指している領域だ。
ただし汗は、そもそも採収できる液体量が少ない上に、その時々でバイオマーカーの含有量が変化することから、ラボ環境では上手く測定できても、実環境で安定して精度高くセンシングすることの難易度が高い。
Epicore Biosystemsはそうした汗をウェアラブルデバイスでセンシングすることに取り組むベンチャー企業の1社だ。
マイクロ流体技術を使った汗センサ
同社は2017年創業のシードステージのベンチャーで、ノースウェスタン大学のJohn A.Rogers研究所からスピンアウトした企業である。
Epicoreは皮膚のようなウェアラブルマイクロ流体ソリューションを開発。粘着性の皮膚パッチに組み込まれたマイクロ流体技術は、効率的に汗を収集するために注目されている技術でもある。上記の画像にあるように、肌に装着したこのパッチは、汗が流路に流れ込み、その化学反応によって色が変わる。このパッチの色をスマートフォンのカメラで撮影し、画像を解析することで含有バイオマーカーの量を分析する。
(補足)上記にあるように、含有バイオマーカーの解析にはカメラベースの撮影が必要になるため、常時自動でモニタリングされるわけではなく、1日数回、定点的にスポットで計測することを想定していると考えられる。
シェブロンと提携しPoCを実施
5月10日、同社は石油大手のシェブロンとの提携を発表した。この提携は石油やガスなどのフィールドにおける作業者の脱水状態と熱ストレス状態をモニタリングすることを狙ったPoC(Proof of Concept:概念検証)を実施するためのものだ。
EpicoreのCEOであるRoozbeh Ghaffari氏はこう述べている。「ウェアラブル技術は、産業アスリートの水分補給管理の将来において変革的な役割を果たします。」シェブロンと協力して、Discovery Patch©とAnalytics Platformを評価し、労働者の熱ストレスと脱水症の衰弱効果についての認識を高めることに興奮しています。 」
飲料大手とも提携してアスリート向けに実用化
また、Epicoreは飲料大手のゲータレードとペプシコと提携し、ーソナライズされたパフォーマンス追跡スウェットパッチであるGxスウェットパッチを開発した。ウェアブルで装着しておき、運動後に結果を測定することで、最適な水分補給を行うためのリアルタイムでパーソナライズされたレコメンドをアスリートに提供することができる。この技術は312人ものアスリートを対象とした大規模な研究を元に実用化された。
このように、Epicoreはその技術を活用して、まずはアスリートや産業(作業者)向けの用途で実用化をしようと試みている。
2021年に注目すべき、デジタルヘルスの健康・ヘルスケアモニタリングや解析技術の動向について整理した。技術の全体像について知りたい人はこちら。
参考:(特集)2021年デジタルヘルスの技術動向 ~健康・ヘルスケアモニタリング / 解析~
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参考文献:
1) Skin-interfaced microfluidic system with personalized sweating rate and sweat chloride analytics for sports science applications, BY LINDSAY B. BAKER, JEFFREY B. MODEL, KELLY A. BARNES, MELISSA L. ANDERSON, et.al, Science Advances 11 Dec 2020:Vol. 6, no. 50, eabe3929, DOI: 10.1126/sciadv.abe3929
2) Epicore Biosystems announces agreement with Chevron U.S.A. Inc. to evaluate wearable technologies for hydration and heat stress management in the workplace, Press Release
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