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Medtech SummitでVital Connectが語ったリモートモニタリング

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Medtech Summitは医療機器技術の年間のハイライトが語られる場となっている。毎年開催されるこのカンファレンスは、ドイツバイエルンの経済・地域開発・エネルギー省に代わって、Bayern Innovativ GmbHが主催している。数多くの著名な企業や研究者、そして業界プレーヤーが登壇し、講演を行っている。

今年講演を行った1社にVital Connectというベンチャー企業がいる。この企業はパッチ型のウェアラブルデバイスを使った在宅リモートモニタリングのシステムを提供しているが、非常に特徴的な技術を持っており、特にアルゴリズムに強みがある。旭化成もCVCを通じて同社に出資を行っていることで知られている。今回はVital Connectの事業・技術について、講演で触れられた内容とともに振り返っていく。

使い捨てのウェアラブルパッチと独自アルゴリズム

Vital ConnectのCEO Peter Van Haur氏はこう述べている。
「体温計を口にくわえているかのように、心拍数、心拍変動、呼吸数、体温を監視することができます。」

同社のウェアラブルパッチは、胸に取り付けることができるデバイスで、医療グレードでこれらのパラメーターを測定することができる。上記で触れられているバイタルサインに加えてシングルリード心電図も測定可能だ。このパッチは7日間連続で使うことができ、測定期間中、24時間連続でモニタリングを行う。

https://www.youtube.com/watch?v=Ss-EuQtRC8M
同社公開の動画への直リンク

同社の強みはアルゴリズムにある。同社は約130件の知的財産を保有しており、そのほとんどがアルゴリズムに関するもので、ソフトウェアであるVistaソリューションには16件、バイタルパッチ自体には17件、Bluetooth接続には3件の特許を保有している。

このアルゴリズムはバイタルサインに意味を持たせ、ソリューションとしての価値を形成する。例えば、パッチを身に着けている患者が座っていようが横になっていようが、姿勢を常時監視している。「長期介護や在宅環境でよく見られる転倒イベントがあれば、すぐに患者の状態を検出します。」とPeter氏は述べている。「魔法の数字は3,500歩です。もし患者が3,500歩以上歩くことができれば、リハビリやプロセスを経て、患者にとってより良い結果が得られます。」。さらに、同社のアルゴリズムは21の固有の不整脈を監視および検出することができる。

また、大変興味深いのはユーザーの健康状態を「早期警戒スコア」と呼ばれる評価指標に集約。健康状態悪化の兆候を検知してスコアに反映させることで、視覚的にアラートを提示することが可能だ。

このような病状の悪化検知・兆候検知の技術というのは、現在、リモートモニタリング市場において大変注目されている。リモートモニタリング市場はGlobal Industry Analysts, Incのレポートによると、2020年に7億4,570 万米ドルと推定される遠隔患者監視システムの世界市場は、2027年までに17億米ドルへと拡大し、年平均成長率(CAGR)は12.9%と予測されている。そうした中で、この病状悪化・兆候検知というのは技術的にユニークなものだ。

100を超える病院で提供されている

講演の中でPeter氏はこう述べている、「2020年11月にこのサービスラインを提供していたのは7つの病院でした。それが現在では116の病院、59の医療システム、29の州が在宅医療サービスラインを提供しています。」。

病院にとってのメリットは以下だ。
- 入院に至る前に対処できるため、病院負荷を下げることができる
- 患者を医療システムにつなぎ留めておくことで、競合病院に患者を奪われることは無い
- (そもそも) 診察時の問診や限定されたデータでしか患者の状態把握ができなかったが、このシステムを使うことで患者の状態を正確に、時系列で理解することができる。

そしてこのリモートモニタリングソリューションは臨床試験・研究市場において、大手製薬会社や大手医療機器メーカも利用しているという。ファイザー、武田薬品、エリ・リリーなどの大手企業は、最終的に市場に投入する新薬の有効性を実証するために、Vital Connectの技術を使用しているとPeter氏は語った。

徐々に米国で広がりつつあるVital Connectの兆候(悪化)検知技術を使ったリモートモニタリングであるが、現在CEマークも取得しており、これまで米国に集中していた事業展開を海外に広げる準備が整いつつある状態だ。

 

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  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

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