学習効果を高める脳神経刺激デバイスを開発するhummがパブリックベータ版をローンチ
米国のカリフォルニア大学バークレー校のSkyDeck Acceleratorを通して設立されたhummは学習効果を高める脳神経刺激デバイスを開発している。同社は今回、そのパブリックベータ版をローンチしたことを発表した。
脳に電気刺激を加えて学習能力を高める
hummは2017年にオーストラリアのパースで設立された。現在は本社を米国カリフォルニア州バークレーに移して活動をしている。同社はこれまでにプレシードとシードステージの資金調達を経て、3.1m$の資金を集めている。
hummが開発しているのは学習能力を高めるために脳神経を外部から刺激するデバイスだ。この非侵襲な額に装着するデバイスは、神経科学のサイエンスに基づいて開発されている。
同社のデバイスは経頭蓋交流刺激法(tACS)を用いて、脳のワーキングメモリ(作業記憶)に影響を与えることができる。人の作業記憶に影響を与える脳内の電気的リズムの1つであるシータ波と同期させ、シータ波のパワーを穏やかに高める。結果として、脳内の信号を数分で安全に調整し、集中力を高め、最大2時間の間、一時的に脳はより多くの情報を保持することができる。
ワーキングメモリとは、作業や動作に必要な情報を一時的に記憶・処理する能力のことだ。このワーキングメモリに関する人間の脳の作用についてはわかっていない部分もあり、近年の研究では東京大学がラットを対象とした実験で、海馬の神経活動がワーキングメモリに作用していることが明らかにされている1)。
一方で、脳神経に電気刺激を加えることで、ワーキングメモリを高めることができるということをインペリアルカレッジロンドンの神経科学者Ines氏の研究チームが、ジャーナルで発表している2)など、効果についての研究も存在している。
同社の研究によると、40人の被験者を対象とした二重盲検ランダム化比較試験(プラセボ効果をできるだけ排除する方法)で、tACS刺激を使用した被験者群はそうでない群よりも作業記憶容量の20%の増加を観察したという。
現在、同社のデバイスは米国空軍でもテストされており、UCSFのNeuroscapeラボでの研究にも使用されている。
今回発表されたオープンベータプログラムは約4か月間実行され、開発が順調に進めばhummのデバイスは2022年初頭にリリースされる予定だ。
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参考文献:
1) 作業記憶(ワーキングメモリ)の脳メカニズムを解明, 作業記憶に必要な海馬細胞の神経発火列, 東京大学大学院薬学系研究科ニュースリリース(リンクはこちら)
2) Ines R Violante, Lucia M Li, David W Carmichael, Romy Lorenz, et al.
Imperial College London, United Kingdom; University College London, United Kingdom, Externally induced frontoparietal synchronization modulates network dynamics and enhances working memory performance, DOI:10.7554/eLife.22001(リンクはこちら)
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