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GBSとニューカッスル大学が4.7m$の助成金で唾液グルコースバイオセンサーの初期製造施設を建設へ

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GBS Incとオーストラリアのニューカッスル大学は、世界初の無針糖尿病検査の商業化に向けて、GBS Incがオーストラリア政府からの4.7m$(約5.2億円)の助成を受け、唾液からのグルコースバイオセンサーの初期製造施設を建設することを明らかにした。

唾液からグルコースを測定するバイオセンサーを研究

ニューカッスル大学で物理学者で研究リーダーを務めるPaul Dastoor教授と、Center for Organic Electronics(COE)のPaul氏の研究チームは、唾液からグルコースを測定するバイオセンサー技術を研究している。

唾液には様々なバイオマーカーが含有されており、有望視されている。よく大学で研究されているのはストレスホルモンと呼ばれるコルチゾールや、今回対象となっているグルコース等だ。

しかし、唾液中に含まれるブドウ糖濃度は血中の100分の1であり、精度良くセンシングすることは簡単ではない。微小濃度で唾液中に存在しているため、超高感度のバイオセンサーの開発が不可欠だ。また、夾雑物も含有しているためノイズ除去も課題となる。

Paul教授と研究チームは、この唾液をベースにした高感度バイオセンサーを20年かけて開発。唾液中のグルコースと反応し、電気信号を生成する電気化学反応を開始する認識要素としてグルコースオキシダーゼ(GOX)を組み込んだ、特許で保護された修飾有機薄膜トランジスタアーキテクチャを開発した。

https://www.youtube.com/watch?time_continue=1&v=7SJMCly0wAg&feature=emb_title
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iQ Group Globalへ技術供与

そして、この技術は2016年にiQ Group Global社へ技術提供し、iQ Group Global内で開発が続けられた後、患者や医療従事者向けの非侵襲的リアルタイムモニタリング・診断テストソリューションを開発する企業「GBS Inc」としてスピンオフされる。

現在、GBS Incはナスダックに上場をして実用化に向けた技術開発を続けている。

この技術が実用化となれば、糖尿病の患者は血糖値をモニタリングするために、指から血を採血する必要が無くなり、唾液からグルコース濃度をモニタリングできるようになるため、患者にとってインパクトがある。

なお、この修飾有機薄膜トランジスタに寄るバイオセンサーは、ロールツーロールの印刷プロセスで製造することができるため、低コストで製造できるとしている。

今回の助成金は、オーストラリア連邦政府の科学助成金で、国家製造優先事項の1つとして特定される分野での助成となっており、「医療製品優先助成金」というものだ。GBSはこの資金を使って、バイオセンサーの製造施設を建設する。

130種類もの適応症のモニタリングを目指すプラットフォーム

さらに、このバイオセンサーはグルコース濃度をモニタリングするだけではない。

唾液グルコースバイオセンサーの商業化が成功した後は、次のステップとして、癌、感染症、アレルギーの診断/管理を含む追加のポイントオブケアアプリケーションに合わせて調整される予定だ。

現在、合計130のバイオマーカーを対象とした検知技術が開発中であるとGBS社は発表している。

 

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ー 技術アナリストの目 -
GBS社は米国FDAへの医療機器申請をすでに行っており、現在、FDAとのやり取りが続いている段階にあります。臨床データもある程度そろっている状態なのだと思いますが、市場へのインパクトが大きいと見込まれるだけに、FDAもこの領域はクラスⅡの認可を出すことに対して非常に慎重です。しかし、今回、初期の製造設備の建設を行うというのは、FDAとのやり取りが進展している可能性もあります。唾液からのグルコースモニタリングというのは患者にとって非常にインパクトのあるものであり、実用化できれば大変面白い技術です。

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  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

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