バクテリアでレンガを育てるバイオセメント技術を開発するBiomason
バイオセメント・コンクリートとは?
バイオセメントとは、微生物・バクテリアによって生物学的に生成することができるセメント技術のことである。そしてコンクリートに自己修復機能を持たせたバイオコンクリートの技術も存在している。
(補足)セメントとコンクリートの違いは、セメントはコンクリートの原料の1つであり、セメント・水・砂・砕石・砂利を混ぜて作られたものがコンクリートである。
様々なベンチャー企業がこうした技術の開発に取り組む中で、その内の1社であるBiomasonは、バイオセメントの開発を行っている。
セメント生産におけるCO2排出を削減する技術
Biomasonは2012年創業の米国のベンチャー企業である。
同社は外部の周囲と同じ温度で成長する非病原性微生物を使い、バイオセメントを成長させる。バイオテクノロジーの力を利用して従来のセメントを再発明しようとしているのだ。
一般的に使われるセメントの種類であるポルトランドセメントは、その製造プロセスにおいて、同社によると世界のCO2排出量の8%を占める一大CO2排出源となっており、長くプロセスが変わっていない成熟技術だ。焼成という高温プロセスがあり、その過程でCO2を大量に排出する。Biomasonはこの成熟したプロセスに切り込み、バイオセメントによって2030年までにコンクリート業界の世界の炭素排出量の25%を削減することを目指している。
同社が開発したbioLITH™タイルは、85%の使用済みリサイクル天然骨材と15%の炭酸カルシウムでできており、半乾燥混合物での振動圧縮によって形成さる。生物学的に生成された炭酸カルシウムが、天然骨材の粒子間に橋を形成し、サイズは変わらず密度が高くなっていき、72時間で完全な強度に達するという。
このタイルは内装や外装、そして床材として利用することができる。
Biomasonの技術は、米国のSBIRフェーズⅠ~IIで、応用技術とスケールアップ技術が確立されたきた。実に2014年以降、6年間も研究開発が積み上げられてきており、ようやく商業化間近まで来ている。
H&Mグループとの戦略的パートナーシップ
Biomasonは2021年6月に、H&Mグループとの戦略的パートナーシップを締結した。
このパートナーシップは、H&Mの実店舗向けの低炭素フローリングソリューションに、Biomasonのバイオセメントを適用するためのテスト・実証を行うものとなっている。
H&MグループのCircular Innovation LabのプロジェクトマネージャーであるMartin Ekenbark氏はこう述べている。
「Biomasonのテクノロジーは、店舗からオフィス、生産施設に至るまで、構築環境でカーボンニュートラルを達成するための重要なコンポーネントを提供できます。」
ようやく商業化間近に
Biomasonは昨年、チームを2倍以上に増やし、従業員数は80人に到達している。2019年12月には資金調達ラウンドを実施し、23m$もの資金を調達している。
最近、元テスラの自動車製造担当副社長として、カリフォルニア州フリーモントにあるテスラの主力生産工場での製造業務を担当していたBruggeman氏を迎え入れ、ついに商業生産の立ち上げに向けて準備を開始している。
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