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抗菌・抗ウイルス繊維技術を使った製品を開発するClarosがシリーズAで約5.4億円を調達

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抗菌・抗ウイルス繊維技術を使った製品を開発する米国ベンチャー企業のClaros Technologiesが、シリーズAで5m$(約5.4億円)を調達したことを8月31日に発表した。リードインベスターは3x5 Partnersとなっている。

機能性繊維と吸着材を開発

Clarosは米国ミネソタ州に拠点を構えるアーリーステージのベンチャー企業だ。

特殊な機能性を持った吸着材と繊維素材を開発している。同社が開発した吸着材は空気と水からの汚染物質を化学的に結合または「吸着」して除去する。これは環境修復のために利用される。

例えばフッ素系界面活性剤(PFAS:パーフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物)は、化学物質が自然に分解しないため、環境中に残留してしまう。そのため現在、このPFASの環境や人体への影響については大きく注目を集めており、例えばマクドナルドは今年1月に、2025年までに全ての包装・容器からPFASを全廃することを発表している。Clarosが提供しているClarosorb PFAS吸着剤は、水中のPFASを効率的に捕捉して無害化することができるようだ。

そしてもう1つは機能性繊維だ。

同社が開発した独自のテキスタイル処理技術は、抗ウイルス性および抗菌性、耐紫外線性、防臭性、吸湿発散性および速乾性、耐火性などのさまざまな特性を備えたテキスタイルを埋め込むことができる。例えば同社はこの抗ウイルス・抗菌性(ZioShield™)の繊維をマスクに適用している。この技術は10分以内にウイルス粒子の99.9%を排除することが、第三者機関によって証明されているとしている。

この技術は米国国防総省と米国農務省からの資金提供によって開発され、2021年3月には米国CDC(米国疾病予防管理センター)から資金助成も受けている。

繊維材料がウイルス粒子を捕捉すると、埋め込まれた活性剤がウイルスと接触して不活化するという仕組みとなっている。この技術はミネソタ大学により、COVID-19を引き起こすSARS-CoV-2の代理としてアルファコロナウイルスで実施され、性能が証明されたことがデータで公開されている。

https://www.youtube.com/watch?v=08aAQImtBYw
同社公開の動画への直リンク

同社はこの抗ウイルス繊維技術(ZioShield™)をロールツーロールで製造できる技術を開発しており、シリーズAの資金調達により、この新しい技術のアプリケーションを拡大していく。

今回リードインベスターとして出資をした3x5 PartnerのマネージングディレクターであるNicholas Walrod氏はこう述べている。

「Clarosチームと提携することに興奮しています。Clarosは、大きな市場機会を持つ特定された、緊急のニーズに対して明確で完全なソリューションを提供しています。」

 

Claros TechnologiesのHPはこちら


ー 技術アナリストの目 -
PFASは現在世界中で規制が強化されており、先般、日本でも沖縄の米軍基地周辺の河川で、基地に起因するとみられるPFASの検出が問題となっていることが報じられてもいました。現在、世界中でPFAS除去のプロジェクトも進行しており、今後も同社の製品が使われる機会がありそうです。またCDCから助成を受けている抗ウイルス・抗菌繊維は、今後マスク以外にも用途が広がるのか、動向を見ていきたいと思います。

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  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

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