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呼気でのガンなどの疾患検知技術を開発するOwlstone MedicalがシリーズDで約63億円を調達

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呼気によるガンや感染性疾患の早期発見を行う技術を開発している英国ベンチャー企業のOwlstone Medicalが、シリーズDの調達ラウンドを実施し、58m$(約63億円)の資金調達を行ったことが9月7日に発表された。

香港のVCであるHorizons Venturesをリードインベスターとして、アジア・中東・米国からの既存及び新規の著名な投資家が出資を行ったという。(リード以外の投資家は非開示)

呼気による疾患スクリーニング技術

呼気には様々なバイオマーカーが含まれている。呼気に微量に含まれるバイオマーカーをバイオセンサや半導体ガスセンサでセンシング、またはラボで解析することで、疾患を早期に、非侵襲でスクリーニングする技術が開発されている。

特にガンは、2020年には約1,000万人がガンで死亡しており1)、日本においては毎年死因の1位はガンが占めている2)。実は世界全体で見るとガン単体では死因の上位には来ていないが、とはいえ毎年約1,000万人もの人がガンを死因としているのだ。

ガンは早期発見することで、その後の生存率を大きく上げることができる。しかし一方でガンの発見は精密検査が必要であり簡単ではない。そこで、呼気から非侵襲でガンなどの重大な疾患を検知できることは、大きな意味を持つ。

Owlstone Medicalはその本命の1社だ。

Owlstoneは現在、PANという複数の癌の早期発見を狙った臨床研究を実施している。対象は乳がん、子宮頸がん、結腸直腸がん、肺がんで、英国全土でのスクリーニングプログラムとなっている。ケンブリッジ大学病院NHS財団トラスト、ケンブリッジ大学、Cancer Research UK(CRUK)との共同研究だ。

独自開発した呼気サンプラーを使って、揮発性有機化合物と呼吸器飛沫のサンプルを収集し、そのサンプルをラボで解析する。そしてHRAM定量(高分解能精密質量定量)分析を使って、独自に保有するVOCライブラリと照合され、VOC中の微量のバイオマーカーを検出する。なお、呼気サンプラーでのサンプル収集は、フェイスマスクに約10分間息を吹き込む必要があるという。

また、この技術の応用可能性は、ガンに留まらない。

呼気に含まれる微量の水素やメタンは、過敏性腸症候群(IBS)、小腸細菌異常増殖(SIBO)、食物吸収不良などの消化器系の健康状態を判定することができるという。Owlstoneは英国の腸の健康診断サービスを提供するFunctional Gut Clinicと、診断キットを提供しているFunctional Gut Clinicと提携し、自宅での腸の健康診断を行うことができるように共同技術開発を行っている。

今回のリードインベスターであるHorizons VenturesのPatrick Zhang氏は、次のようにコメントしている。

「非侵襲的に収集された正確なバイオマーカーは、将来の医療にとって重要なスクリーニングおよび診断ツールになります。Owlstone Medicalの革新的なブレスバイオプシー技術が、痛みを伴わずに効果的に私たちの健康を測定し、保護することができます。」 

 

Owlstone MedicalのHPはこちら


【世界の呼気センシングの技術動向に興味がある方】

世界の呼気センシング技術を開発するベンチャー企業のロングリスト調査や、大学研究機関も含めた様々な呼気センシングの用途の整理、実用化動向などに興味がある方はこちらも参考。

詳細:先端技術調査・リサーチはこちら


参考文献:

1) 死亡原因トップ10, 公益社団法人日本WHO協会(リンクはこちら

2) 日本人の三大死因―「老衰」が第3位に(2年連続), 大修館書店サイト(リンクはこちら


  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

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