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イスラエルのTower Semiconductorが光フェーズドアレイLiDAR技術を発表

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イスラエルの半導体ファウンドリー大手企業であるTower Semiconductorが、光フェーズドアレイによるビームステアリングを行う新しいLiDAR技術を発表した。

LiDAR技術は大手ベンチャー問わず、様々な企業が技術開発を行っており、新規参入企業も多い。今回のTower Semiconductorはアナログ半導体のファウンドリーであり、LiDARの重要なコンポーネントであるシリコンフォトニクスチップを手掛けている。

用途はADAS・自動運転向け

今回開発されたLiDAR技術はADAS、そして将来的には自動運転向けであることが用途として想定されている。

(補足)なお、Tower Semiconductorからあった発表自体はLiDAR技術ではあるが、同社自身がLiDARを手掛けるのではなく、同社は半導体企業なので、優れたLiDAR技術を開発することで自社のシリコンフォトニクスチップを展開したいという意図があるように見える。発表ではどういうポジションで技術を展開していくのかについては明言していない。

豊田中央研究所や大学らとの共同研究

この技術は、Tower Semiconductorが単独で開発したものではなく、米国の名門校であるUSC Viterbi School of Engineering、そして豊田中央研究所やSamsung Advanced Institute of Technology (SAIT) 、USC Pratt and Whitney Institute for Collaborative Engineeringとの共同研究となっている。

USCの研究者であるSungWon Chung氏が、Tower Semiconductorのシリコンフォトニクスプラットフォームを使った新しいICを設計。シリコンチップ上に数百のコンパクトな光アンテナ実装し、光フェーズドアレイ方式とすることで可動部品を必要とせずに周囲の環境をセンシングすることができる。

また、LiDARの光源には1550nmを使い、高出力でもアイセーフティの問題をクリアするとともに、連続波周波数変調(FMCW)を使用して、混雑した運転環境での環境光や他のLiDARからの干渉に対する耐性を高めている。

Tower SemiconductorのDr. Ed Preisler氏はこう述べている。

「私たちは、安全な自動運転車とロボットを実現するための一歩である、この革新的で、根本的かつ画期的なLiDARテクノロジーに協力できることを誇りに思います。」

なお、この研究成果は2021 IEEE International Solid-State Circuits Conference Digest of Technical Papersに掲載されたという。

シリコンフォトニクスプロセスはDARPAのプログラムでも採択

なお、このTower Semiconductorのシリコンフォトニクスプロセスは、今年に入ってDARPAのプログラム「LUMOS」でも採択されていることが発表されている。

LUMOSプログラムは、高性能レーザーを高度なフォトニクスプラットフォームに導入し、従来大規模でコストのかかる光学システムを、チップスケールに置き換えることを目的に実施される研究開発助成プログラムであり、商用および防衛アプリケーションに対応することを目指している1)

注目されるシリコンフォトニクス

近年、シリコンフォトニクスはセンサの小型化や量産化、そして5Gシステムなどで利用が期待されている。LiDARメーカーは小型化と量産化のカギとなるこうした技術を、企業買収によって内製化する動きも見られている。

参考:LuminarがInGaAsチップの設計・開発パートナーであったOptoGrationを買収

参考:自動運転のAuroraがLiDARオンチップのOURS Technologyを買収

Tower Semiconductorのシリコンフォトニクスプラットフォームも、今後様々な用途へ展開していくことが期待される。

 

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参考文献:
1) DARPA Looks to Light up Integrated Photonics with Chip-Scale Laser Development, DARPA Website(リンクはこちら


  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

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