100m$を調達し事業急拡大を加速する車両検査ベンチャーのUVeye社
UVeyeは車両検査技術によって、自動車メーカー、中古車ディーラー、運輸、タクシー業界など、自動車に関わる多方面から注目を集め、2023年5月にはシリーズD資金調達ラウンドで100m$を調達した。
本稿ではUVeyeを支える技術と、UVeyeが求められる背景について解説する。
人手で1時間の工程を数分にする検査技術
UVeyeは、高解像度カメラで車体を撮影し、機械学習を組み込んだアルゴリズムによって各種診断を行う自動車検査サービスのスタートアップ企業だ。
車体の撮影には、Helios、Artemis、Atlas、Apolloの4種類のカメラが用いられ、それぞれが車体下部(Helios)、タイヤ(Artemis)、ボディ(Atlas)、内装(Apollo)を担当する。流体漏れ、位置ずれ、錆、タイヤの摩耗、傷、へこみなど、車全体を包括的に検査することが可能だ。従来、人の手と目によって実施されていた当該検査では1時間以上かかるところ、UVeyeの全自動検査であれば数分で検査工程が終了し、異常箇所と保全のための提言をまとめたレポートが作成されるという。
ただし、撮影と画像解析を主とする技術であるため、目に見えない部分の保全はできないことに注意が必要だ。この部分は依然、人が実行する領域として住み分けがなされていくのだろう。
また、UVeyeではデータの見せ方についても工夫が為されている。49インチ、または55インチの大型タッチパネルを用いて撮影した画像を表示し、自動車の保有者自身で故障の状態を確認できるようにした。
こうした工夫から生み出されるのは自動車検査における透明性と信頼性だ。これまでの自動車検査では専門家の意見に耳を傾けることしかできなかった。自動車検査を実施するのはあくまで人であるため、どれだけマニュアル化されようと人による揺れや見逃しがある。UVeyeでは検査工程から人の影響を完全に排することで透明性を高め、ユーザーとより良い信頼関係を築くことを可能とした。
中古車やフリート管理など多様な顧客を抱える
UVeyeの技術は人の手による検査の代替となるものだが、自動車業界の各方面から様々な歓迎の声が上がった。以下では、各業界でUVeyeの検査技術がどのように用いられているのかを解説する。
中古車販売・オークション
CarMaxはアメリカ最大手の中古車販売事業者だが、UVeyeと提携して検査を自動化することを発表した※1。
2020年にオークション販売をオンラインに移行したCarMaxだが、ここで問題となったのが売買における信頼性だ。
人の手と目による検査では細かな傷や損傷の発見、報告に限度があり、それを買った側は仲介業者であるCarMaxに不信感を募らせる。マンパワー的な限界もあり、こうした問題が現れることはある程度仕方のないことであった。
しかし、UVeyeの自動検査では細かな損傷でも見逃さずに、買い手に有益な情報を提供し、かつ、買い手が自身の目で撮影された画像を精査することができる。一律に、同じアルゴリズムによって実行される検査は限りなく公平で、「高く売りたい」という思惑が介在しないため、購買体験の質を高めることが可能だ。
また、売却後に顧客から「傷がある」と理不尽なクレームを言われた場合にも対応が容易になる。中古車ディーラー側は売却した全ての中古車の詳細な画像データを保有しているため、「売却時点でその傷は存在しなかった」と、自信を持って証拠を提示できるのだ。
FLEET管理
同一規格のモビリティー群を英語圏では「Fleet」と呼ぶが、Fleetを管理する事業者もUVeyeのシステムを導入している。
運輸、タクシー業界では、同じ規格のトラックやタクシーを大量に保有しており、それらの検査、保全にも莫大な時間とコストがかかる。UVeyeの検査技術はこうしたコストを大幅に削減することが可能だ。
UVeyeの簡易検査技術を用いれば、車両検査の頻度を高めることができ、ステーションに停車する度、1日に数度の検査を実施できる。これにより、重大な故障となる前に問題を見出し、安全性を向上できる。
製造ライン、検査
UVeyeの画像解析技術の対象となるのは、完成後の自動車だけではない。製造ラインに組み込むことで、検査体制の効率化にも役立てられている。
自動車大手General Motors(米)はUVeyeに一部出資すると共に戦略的パートナーシップを結び、既にいくつかの工場へUVeyeの検査装置を導入している。
品質管理プロセスが標準化されることで安全性が増し、検査工程の効率化、リコールの低減などに繋がるという。
2023年5月にシリーズDで1億ドルを調達
2023年5月、UVeyeはシリーズD資金調達ラウンドで1億ドルを調達したことを発表した※2。
本資金調達ラウンドは米ベンチャーキャピタルのHanaco VCが主導し、GM Ventures、CarMax、W.R.Berkley(米、保険会社)などが出資している。
これにより、2016年の設立以来、UVeyeが調達してきた資金は計2億ドル以上となり、企業価値は8億ドル以上となった。
同社の事業展開は加速している。
2022年から2023年初頭にかけて、UVeyeは米国で5,000以上のディーラー、中古車オークション、フリートが参加する大規模なプログラムを発表した。前述のようにGeneral Motors、Volvo Cars USA、CarMaxとは、卸売ネットワーク全体にUVeyeの技術を導入する商業契約を締結した。
なお、今回の資金調達ラウンドで出資をしているGM VenturesはGeneral MotorsのVC部門であり、2022年6月にも出資を受けて北米の限定された販売店でUVeyeのシステムを導入していた。今回のシリーズDはフォローアップ投資となり、両社の提携関係が順調に進んでいることを感じさせる。
今回のシリーズDにより、今後3年以内に事業をさらに拡大し、全米の数千規模のディーラー、中古車オークション、車両販売会社に業界初の検査技術を導入することができるとしている。
参考文献:
※1 CarMax Partners with UVeye to Automate Inspections at Wholesale Auctions(リンクはこちら)
※2 UVeye Series D Funding Round Tops $100 Million for Major Expansion in U.S.(リンクはこちら)
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