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Thinking Machines Labがシードラウンドの目標額を2940億円に設定と米報道。2025年2月設立のAIスタートアップ

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AIスタートアップの米Thinking Machines Labは、シードラウンドの目標額を$2b(約2940億円)に設定する模様だ。2025年4月10日、Business Insiderが報じたのを皮切りに、各メディアが追随している。

Thinking Machinesは2025年2月、OpenAIでCTOを務めたMira Murati氏が設立したスタートアップである。

Anthropicと似た形で創業したThinking Machines

Murati氏がOpenAIを退社したのは、2024年10月だった。

それよりおよそ1年前の2023年11月、Sam Altman氏がOpenAIのCEOを事実上、解任されたことをご記憶の読者もいるだろう。このとき暫定CEOを務めたのが、Murati氏だった。Altman氏のCEO復帰後のMurati氏は、再びCTOとして職務に就いていた。

2024年10月に話を戻すと、Murati氏は退社の理由を「独自の探求を行う」ためと述べている。そして、Thinking Machinesは2025年2月の立ち上げ時、米メディアのTechCrunchに「最先端のAIシステムが急速に進歩するのに対し、科学界の理解が追いついていない」という趣旨のブログを共有したという(公開はされていない模様)。

この点は、Thinking Machinesと同じくOpenAI出身者を中心に創業したAnthropicと重なる。Anthropicも安全性を追求する思想を持っており、同社ウェブサイトの「About」のページには、safetyという言葉が9回、使われている。

Altman氏も、AIへの規制が必要と2023年5月の米上院公聴会で述べたように、必ずしも安全性を軽視しているわけではないであろう。しかしその度合いにおいて、Thinking MachinesのMurati氏やAnthropicを創業したAmodei兄妹との間に違いがある可能性が、一連の経緯から見て取れる。

Thinking MachinesはMurati氏の他にも、OpenAIで要職を務めた人物が集う。チーフサイエンティストのJohn Schulman氏はOpenAIの共同創業者であり、CTOのBarret Zoph氏はOpenAIで研究担当副社長だった。

また、シードラウンドに関する報道の直前には、やはりOpenAI出身のAlec Radford氏とBob McGrew氏、2人の名が「アドバイザー」としてThinking Machinesのウェブサイトに載った。

このようにOpenAI出身者が目立つ一方、Google GeminiやMistralで開発経験のあるスタッフも存在し、MetaやNetflix出身者も確認できる。

安全性以外の面でThinking Machinesは、ウェブサイトにおいて「人間とAIの協働とカスタマイズに重点を置くことに加え、モデルのインテリジェンスも極めて重要であり、科学やプログラミングといった分野において最先端の機能を備えたモデルを構築」していると言及する。

AIスタートアップで続くビリオン単位の調達

米国でThinking Machinesのシードラウンドは、「当初の計画より倍増」と報道されていることから、元々の目標額は$1b(約1435億円)であったようだ。

いずれにしても巨額と感じるが、やはり前出のAnthropicも2024年12月から翌2025年3月にかけ$4b、$3.5bと、立て続けにビリオン(10億ドル)単位の資金調達に成功した。まだ何ら成果のないThinking Machinesも、経験豊富な多数のスタッフの存在によりビリオン単位の調達が可能であると踏んでいるようだ。

また、AI・LLMの開発やトレーニングに相応の金額が必要となることも、目標額に表れているといえるだろう。調達後の使途も、これらになる可能性が考えられる。




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  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

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