ニュース記事

家畜向け昆虫食のEntosystemが約86億円の資金を調達。生産能力拡大に活用

INDEX目次

家畜向け昆虫食や昆虫由来の有機肥料開発を手がけるEntosystemは2024年10月2日、$58m(約86億円)の資金調達に成功したと発表した。

同社は2016年、カナダ・ケベック州で設立。これまでの資金調達総額は$100m(約150億円)近くに上り、後述するように年間数万トン規模のプロダクト生産が可能となっている。

環境負荷を85%削減、有機廃棄物の再資源化を実現

Entosystemは、埋立地に廃棄される有機廃棄物を昆虫タンパク質と有機肥料に変換する技術を有する。同社のドラモンドビル工場は、年間9万トンの有機物を処理し、5000トンの高品質タンパク質ミールと1万5000トンの有機肥料を生産可能なカーボンネガティブな施設だ。

カーボンネガティブとは、この場合では工場から大気中に放出される温室効果ガスよりも森林などに吸収されるそれの方が多いことを示す。カーボンクレジットも創出している他、生態学的なプロセスを通じて有機物を食物連鎖に再導入することで、食品ロスと廃棄物の削減にも貢献している。第三者のリサーチによると、同社のプロセスは従来の手法と比較して温室効果ガス排出を85%削減した。

ドラモンドビル工場は2023年に開設した新しい工場で、昆虫食などの生産施設としては北米最大規模である。10万平方フィート(約9000平方メートル)で、立ち上げのために$60m(約92億円)の官民投資を受けた。

同工場の生産プロセスは、農場や飲食店から回収した有機物をミズアブの幼虫に給餌。毎日250トンの有機物が餌として与えられ、それらは6日ほどで消費される。その後、幼虫を乾燥させた上で家畜の餌にしている。

以上のプロセスは特許を取得。また、工場としてはドラモンドビルに70人の新規雇用も創出した。

3社による戦略投資、第2工場の建設へ

今回の投資は、食品廃棄物回収企業であるSanimaxら3社の主導により実施。調達した資金は、既存生産能力の増強と第2工場の建設に充てられる。

EntosystemのCEOであるCédric Provost氏は「戦略的なビジネスパートナーとの協力、そして何より優れたチーム(Entosystemのメンバー)の献身により、短期間で業界のリーダーとしての地位を確立できた。私たちは野心を実現するための、成そして長するためのすべての鍵を手中に収めている」とコメントした。

 



【世界の昆虫食の技術動向調査やコンサルティングに興味がある方】 

世界の昆虫食の技術動向調査や、ロングリスト調査、大学研究機関も含めた先進的な技術の研究動向ベンチマーク、市場調査、参入戦略立案などに興味がある方はこちら。

先端技術調査・コンサルティングサービスの詳細はこちら




  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

CONTACT

お問い合わせ・ご相談はこちら