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防犯テックのFlock Safetyが405億円を調達。CEO自身の盗難被害から創業のスタートアップ

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防犯関連のテックスタートアップである米Flock Safety(正式社名はFlock Group)は2025年3月13日、$275m(約405億円)の資金調達完了を発表した。

Flock Safetyは2017年設立。ジョージア州アトランタに本拠を置く。画像、動画から防犯に関するソリューションを法執行機関や不動産管理会社などに提供する。

ナンバープレート読み取りを中心とした製品ラインナップ

Flock Safetyの中心的なプロダクトとなっているのが、車のナンバープレートリーダー。License Plate Recognition(LPR)という技術を用い、問題がありそうな車両を検知するとSMS、メール、アプリケーションでユーザーに通知が行われる。料金体系は年額のサブスクリプションとなっており、メンテナンスやユーザートレーニングなどの費用が別途かからない点をアピールする。

LPRは用途によりデバイスが異なり、駐車場用、複数車線や高速走行をする車に対応するもの、地域の犯罪抑止向けなどがラインナップに並ぶ。また、サードパーティーのLPRを統合することも可能だ。

他にも、ドローンや固定カメラによる映像からのナンバープレート読み取りを行ったり警官に情報提供をしたりができるプロダクト、動画の音声から銃声を検知するプロダクトも存在する。

Flock Safetyのドローン(同社プレスリリースより)

今回の資金調達の金額から見られるように、Flock Safetyの防犯で果たす役割には大きな期待が寄せられているが、一方で課題もある。

バージニア州ノーフォーク市はFlock SafetyのLPRを調達し、市内に172台のカメラを設置。しかし、プライバシー侵害を理由に市民が市に撤去を求める訴訟を起こしている最中だ。

その他、Flock Safetyの最近の動きとして、地方自治体向けSaaS開発企業のZencityと共同で行った、小売業における犯罪の消費者意識調査が挙げられる。2025年2月に結果を発表した。小売業での犯罪を目撃したことのある63パーセントがオンラインショッピングをする傾向にあるとし、消費者の51パーセントは鍵がかけられた棚などにある商品へアクセスするのに5分以上待たされた経験があると指摘。さらに、消費者の54パーセントはLPRカメラが小売店での窃盗抑止に役立つと回答している。

「犯罪を撲滅する」とCEO

今回の調達では、2018年のシリーズAからFlock Safetyへ投資しているBedrock CapitalやY Combinatorなど、複数のベンチャーキャピタル(VC)が応じた。Flock Safetyは、現在の同社の年次経常収益(ARR)が$300m(約445億円)となっており前年比で70パーセント増加していることから今回の調達が行われた、としている。

Flock SafetyのGarrett Langley共同創業者兼CEOは、「われわれは、犯罪を撲滅するというビジョンから始まり、全米に影響を与えるため、Flockを立ち上げた」としつつ、「今回の資金により、人々の生活に変化をもたらすテクノロジー構築への投資が加速できる」とコメント。ここから、当面は米国全体にFlock Safetyのソリューションを広げ、そのために資金が使われると受け止められる。

また、コメントの前半部が示すのは、Langley氏自身が窃盗事件に遭い加害者確保に難航した経験が創業のきっかけとなった点が、背景にある。




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  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

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