ニュース記事

神経信号を解読するインプラントを開発するINBRAIN Neuroelectronicsが、シリーズBで77億円を調達。グラフェンを活用

INDEX目次

スペインの先端医療スタートアップであるINBRAIN Neuroelectronics(以下、INBRAIN)は2024年10月29日、シリーズB資金調達ラウンドで$500m(約77億円)を確保し、ラウンドの完了を発表した。

INBRAINは、グラフェンを活用して神経信号を解読し、神経疾患の治療を目指す。同社は、自社のプロダクトを「brain-computer interface therapeutics (BCI-Tx) platform」と定義している。邦訳すると、脳コンピューターインターフェース治療プラットフォーム、だ。

参考記事:エレクトロニクスやヘルスケア等幅広い用途で期待される先端材料グラフェン

10マイクロメートルのインプラントで神経信号を読み取り

INBRAIN によると、世界人口の3割が神経疾患に罹患。治療や緩和などにかかるコストはがんと心血管疾患を合わせた額を上回る一方、現行の治療法は侵襲性があり、さらに解像度が低いため汎用性に欠けるという。

一方、グラフェンという素材は前出の参考記事にあるように、鉛筆の芯を単層化したものだ。薄さの割に強靭で、また電荷移動もあることからさまざまな用途が検討されている。

シリーズBの完了で発信されたINBRAIN のプレスリリースには、「インプラントはわずか 10 マイクロメートルの厚さで、人間の髪の毛よりも薄く、神経信号を非常に正確・安全に解読および調整するように設計」と記されている。

INBRAINのインプラント(同社プレスリリースより)

つまり、侵襲的な方法になるもののサイズを可能な限り小さく、薄くし、グラフェンの特性を生かして信号を読み取るものであるようだ。

資金調達に先立つ9月には、英国のSalford Royal Hospitalでこのインプラントを使った複数人への手術を実施。計測や安全面の実証ができたとしている。

政府機関系ファンドが投資

INBRAINのシリーズBはベンチャーキャピタル(VC)が主導したが、多数の政府機関系ファンドが応じている。具体的には、欧州委員会(欧州連合〈EU〉の内閣に相当)関連でEIC Fund、スペイン政府関連でFond ICO Next TechとCDTI-Innvierte、カタルーニャ自治政府のファンドであるAvançsaだ。

資金は、さらなる開発に使われるという。

INBRAINのCEO兼共同創業者であるCarolina Aguilar氏は、次のようにコメントした。

「この資金により、AI駆動型グラフェン神経技術をさらに発展させられる。当該技術は、現行の神経調節技術と比較して、優れた結果を示している。より正確でパーソナライズされた治療を必要とする患者にこの技術を届けるのに、トップクラスのシンジケートのサポートが得られ嬉しい」




【世界の先端医療の技術動向調査やコンサルティングに興味がある方】 

世界の先端医療の技術動向調査や、ロングリスト調査、大学研究機関も含めた先進的な技術の研究動向ベンチマーク、市場調査、参入戦略立案などに興味がある方はこちら。

先端技術調査・コンサルティングサービスの詳細はこちら





  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

CONTACT

お問い合わせ・ご相談はこちら