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【展示会レポート】「NexTech Week 2024(春)」で見たAI分野の動向

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2024年5月22〜24日、東京ビッグサイトで「NexTech Week 2024(春)」が開催された。AI、ブロックチェーン、量子コンピューターを主なテーマとする展示会だ。

ATX編集部は、5月24日に同展を取材。Preferred Networksの岡野原大輔氏による講演や展示の一部をお伝えする。

AIの飛躍的進化の裏にある2つのアプローチの併用|岡野原大輔氏カンファレンス

カンファレンス開始前の模様(編集部撮影)

NexTech Week 2024(春)で5月24日、Preferred Networks代表取締役 最高研究責任者、岡野原大輔氏によるカンファレンス(講演)「生成AIの進化と今後の展望」が行われた。同社では2014年の設立以来、チップを含むAI研究を進めており、計算基盤から基盤モデル、ソリューション全体の開発を手掛ける。

編集部が特に関心を持ったのが、同社の材料探索・マテリアルインフォマティクスのプロダクトである「Matlantis」におけるAIの活用だ。MatlantisそのものもAI技術によるプロダクトだが、従来はプログラムで操作していたという。そこで操作面でもAIを導入し、プログラム言語ではなく日本語での材料探索が可能になっている。

プレスリリースより

カンファレンスのタイトル通り、AIの「進化」と「今後の展望」には多くの時間が割かれた。

まず「進化」について。多くの人はAIについて、大量のデータを読み込み傾向を導き出すもの、とイメージするのではないだろうか。たしかにそれも間違いではないが、現状のAIの全体像を見れば、あくまでも一部に過ぎない。

こうした大量のデータを読み込み、結論を導くことは、AIにおいて「帰納的アプローチ」と呼ばれる。従来は、帰納的アプローチがAIの主流であった。

しかし近年、AIが飛躍的な発展を遂げているのは、帰納的アプローチに演繹(えんえき)的アプローチも加わり、研究・運用されていることによる。演繹的アプローチとは、すでに存在している理論や事実を基に推論を積み重ねていき、結論を導き出す方法だ。

なお、これら「帰納法」と「演繹法」はあらゆる学術において適用されてきた考え方で、帰納法はフランシス・ベーコン、演繹法はルネ・デカルトが、代表的な学者として知られる。

話をAIに戻すと、帰納的アプローチと演繹的アプローチの併用を可能にしたのが、大規模言語モデル(LLM)だ。岡野原氏によれば、LLMによってAIが「人間の『常識』というものを理解し始めた」という。例えば、人間が車を運転しているとき、視界の隅からボールが飛び出してくると、「子どもがいる」と思考して、ブレーキを踏むであろう。AIが帰納的アプローチと演繹的アプローチの双方を行うことにより、こうした人間の思考や常識を理解し始めたというわけだ。

また、LLMによるもう一つの進化として、「自己教師あり学習」も挙げられる。例えば、「こうしたことから私は父と一緒に◯◯◯に相談へ行った」といったような一部の言葉が抜けた文章で、そこに当てはまる言葉をAIが予測するというものだ。

次に、「今後の展望」について。これから数年のうちに起こるであろうと予測されるのが、学習できるスーパーコンピューター(スパコン)がなくなってしまう点。AIの進化にスパコンが追いついていないということだ。電力供給や冷却システム、ネットワーク帯域などがボトルネックの要因となっており、逆に言えばこれらが課題解決の鍵となるだろう。

他、AIのクローズドなモデルにオープン(ソース)なモデルが追いつこうとしている最近の状況、LLMが学習しやすい形にLLMによってデータを加工していくといった予測が話された。

もう一つ興味深かったのが、AIは何かを新しく覚えるとハルシネーションを起こすケースがあるという点だ。AIも忘れてしまったり、間違った情報を出してしまったりする場合があるという。人間のようであるが、今後、進められていくAIのビジネス利用においては、この点での対策も必要とされるだろう。

会場内で目を引いた画像や映像のAI認識

会場内を歩いて興味深かったのが、画像言語モデル(VLM)をはじめとするAIによるビジュアルの認識だ。

先の岡野原氏のカンファレンスでも、Preferred社のマルチモーダル基盤モデルによる画像認識について紹介され、画像にキャプションを付ける作業などができるよう開発中だとの話があった。

それと同様のデモンストレーションを行っていたのが、マクニカのブース。同社は2023年、2024年と2年連続でNVIDIAの「Best Distributor of the Year」を受賞しており、2023年度のNVIDIA製品の販売実績は国内最大となっている。

マクニカのブース(編集部撮影)

そして、NVIDIAのコンピューティングボード「Jetson」を利用したAIによる映像を認識するデモンストレーションが行われていた。カメラが机上を映した映像をAIが認識し、「What is on the desk?」と質問すると、「Keyboard, mouse, and computer」と答えが返ってくる。

また、NTTコムウェアのブースでは、画像認識AI「Deeptector」を展示。既存のアナログメーターのそばにカメラを置き、その画像をAIが読み取ることで、省力化、人手不足に対応するソリューションとなっている。

(編集部撮影)

LLMは今後も進化していくと見られるが、VLMはより伸びしろの大きい分野といえそうだ。また、こうした技術を支えるため、パワー半導体などの一層の進化が求められるだろう。


参考文献:
 ※1:Matlantisサービスサイト(リンク
 ※2:演繹法と帰納法の視点から見た医療 AI, 平田健司ほか(リンク
 ※3:マクニカ、NVIDIAより「Best Distributor of the Year」を2年連続受賞!(リンク
 ※4:工場等製造現場で利用されているアナログメーターを読み取り、AI判定、生産設備のシステムを自動制御, NTTコムウェア(リンク) 




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  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

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