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AIスタートアップと著名企業のパートナーシップ|最近の事例をレビュー

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第2次Trump政権が発足し最初のディープテック関連の動きとなったのが、OpenAI、ソフトバンクグループ、OracleらによるAI関連の大規模投資といえるだろう。

2025年1月21日、大統領就任式を終えたDonald Trump米大統領、OpenAIのSam Altman CEO、ソフトバンクグループの孫正義代表取締役、OracleのLarry Ellison会長兼CTOはホワイトハウス内で共同記者会見を実施。登壇した企業を中心とした共同出資会社が設立され、最大$500b(約78兆円)の投資が行われるとの発表があった。

AIスタートアップに多額の投資が行われていることはATXでも日々報じている通りだが、一方でAI企業・著名企業間の業務面での提携も盛んになっている。本稿では、最近発表されたパートナーシップについて取り上げる。

Anthropic × パナソニック|まずはヘルスケアサービスからAIアシスタントを導入

(プレスリリース・メディアキットより編集部制作)

あらゆるテックに関する米国の展示会「CES 2025」。その初日、キーノートに登壇したパナソニックグループCEOの楠見雄規氏は、Anthropicとの戦略的提携を発表した。

今後、消費者はパナソニックのプロダクトにおいてAnthropicのAIアシスタント「Claude」を利用できる。具体的には、年内にリリースする予定のヘルスケアサービス「Umi」にClaudeを搭載する予定。現時点でUmiは、米国内でリリースする模様だ。

Anthropicは、OpenAI出身者らが2021年に立ち上げた、米スタートアップ。とりわけAIの安全性に重きを置く企業であり、今回、パナソニックが発表した日本語のプレスリリースでも「“AIは安全で、理解可能であり、人間の価値観と深く整合しているように設計されるべき”との考え方を持つ米・AI研究企業」とAnthropicを紹介している。

参考記事:AIスタートアップのAnthropicがAmazonより約6185億円を追加調達。AWSを生成AIモデルトレーニングのメイン基盤に

上記のように、ATXは2024年11月にAnthropicがAmazonからの資金調達、パートナーシップ締結したことを報じている。さらに2025年1月22日、GoogleがAnthropic$1b(約1560億円)を投資したことを複数メディアが報じた。後者の件について、Anthropicは声明を発表していない。

OpenAI × Bertelsmann|メディア企業のパートナーシップ

冒頭で触れたOpenAIだが、ホワイトハウスでの記者会見の翌日である2025年1月22日、ドイツのメディアコングロマリットであるBertelsmannとのパートナーシップを発表した。

提携の第一義として、両社によるメディア・サービス・教育分野でのAIの活用を拡大。具体例として、以下を挙げている。

  • Bertelsmann傘下の放送局・RTL Deutschlandのジャーナリストが調査にOpenAIソリューションを活用
  • 同傘下出版社のPenguin Random HouseのSNS上で、AIが個々の読者に応じた書籍のレコメンド
  • ストリーミングサービスで、AIが番組のレコメンド
  • RTLと番組制作会社のFremantleが共同で、OpenAIのプロダクト、ソリューションを活用し、ビデオ生成

Bertelsmannはここまで触れたように放送局や出版社でグループを構成。日本では「ベルテルスマン」ブランドの世界地図帳も知られる。

Databricks × Meta|従来からのパートナーシップが発展か

(プレスリリース・メディアキットより編集部制作)

ATXは、以下の記事のようにDatabricksが2024年末、シリーズJ資金調達ラウンドで1兆円超を確保したことを報じた。

参考記事:米AI関連スタートアップのDatabricksがシリーズJで1兆円超を調達。Fortune 500の6割がプラットフォームを採用

その後、翌2025年1月22日にはシリーズJ完了により、同社の評価額は$62b(約10兆円)に達したと発表。さらに、Metaとのパートナーシップ締結も明らかにした。

Reutersの報道によると、DatabricksはMetaのLlama開発チームとすでに連携を取っているという。Llamaとは、Metaが開発する大規模言語モデル(LLM)の名称だ。

ATXの記事の通り、Databricksは巨大なデータを取り込み、その加工や管理を容易にするプラットフォームを開発する。そして、プラットフォーム上で利用するLLMの一つであるのが、Llamaとなっている。

もっとも、Reutersの報道でDatabricksのAli Ghodsi CEOは、Metaとのこれまでの関係について語っているのみで、今後はどういった形でパートナーシップが深まっていくかまでは読み取れない。

なお、これらのDatabricksの公式発表では、同社が複数の著名金融機関から合計$5.25b(約8165億円)の信用枠を確保したことも明かされている。

まとめ|AIスタートアップが抱える課題とパートナーシップ

AIの発展で障害になっている要素として、データセンターの電力不足、AIの性能に半導体が追いついていない、といったことが挙げられる。

この点では、冒頭で述べたソフトバンクなどの大規模な投資においてデータセンターの建設が決まっているが、電力面はSB Energy(米国法人。日本の旧SBエナジー、現テラスエナジーとは別法人)が担い、太陽光発電が行われると報じられた。

今回は、OpenAIとメディアコングロマリットのBertelsmannのパートナーシップを取り上げたが、AIが安定的に稼働するためのリソース供給に絡んだ提携も考えられるだろう。

 


参考文献:
※1:AIを活用したビジネスへの変革を推進するグローバルな企業成長イニシアティブ「Panasonic Go」をCES 2025キーノートスピーチで発表, パナソニックグループ(リンク
※2:Google to invest fresh $1 bln in OpenAI rival Anthropic, FT reports, Reuters(リンク
※3:Bertelsmann powers creativity and productivity with OpenAI, OpenAI(リンク
※4:Bertelsmann and OpenAI Agree on Strategic Collaboration, Bertelsmann(リンク
※5:Databricks Announces $15B in Financing to Attract Top AI Talent and Accelerate Global Expansion, Databricks(リンク
※6:Meta backs data analytics firm Databricks as AI boom attracts investors, Reuters(リンク
※7:Stargate will use solar and batteries to power $100B AI venture, TechCrunch(リンク



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  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

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