ニュース記事

米AnthropicがシリーズEで6185億円を調達。ビリオン=10億ドル単位の調達はこの半年で2度目

INDEX目次

米AIスタートアップのAnthropicが2025年3月4日、シリーズE資金調達ラウンドで$3.5b(約5484億円)の確保を発表した。

Anthropicは2024年11月にも、Amazonから$40b(約6185億円。当時レート)を調達。約半年の間に2度、10億ドル単位の調達を実現した。

参考記事:AIスタートアップのAnthropicがAmazonより約6185億円を追加調達。AWSを生成AIモデルトレーニングのメイン基盤に

調達発表の1週間前には新モデルをリリース

シリーズEでの調達が発表される1週間前の2月25日、Anthropicは新型推論モデルの「Claude 3.7 Sonnet」とAIによるコーディングツールの「Claude Code」をリリースした。

Anthropicの発表によると、AIの指標を測るSWEベンチマークでClaude 3.7 Sonnetは以下の数値となっている。

モデル名

開発企業

SWEベンチマークの数値(パーセント)

Claude 3.7 Sonnet

Anthropic

62.3

スキャフォールディング付きでは70.3

Claude 3.5 Sonnet

Anthropic

49.0

OpenAI o1

OpenAI

48.9

OpenAI o3-mini

OpenAI

49.3

DeepSeek R1

DeepSeek

49.2

 SWEベンチマークとは、ソフトウェア開発における課題をAIがどこまで対応できるかを測るもの。なお、スキャフォールディングとは「足場かけ」を意味し、AIが足がかりとなるシステムやアプローチを自己生成することで、計算や推論を効率化する手法である。

AI、LLMの世界で激しい競争が繰り広げられる中で、このように逐次、新モデルを投入するAnthropic に一定の評価を与える企業も少なくないようだ。

シリーズEを発表するプレスリリースで、Anthropicと接点のある企業の実名として、Cursor、Codeium、Zoom、Snowflake、Pfizer、Replit、Thomson Reuters、Novo Nordiskの8社と、Alexa+にClaudeが活用されていることが明記。また、ATXでも既報の通り2025年1月のCESでは、Anthropicとパナソニックのパートナーシップが発表された。

参考記事:AIスタートアップと著名企業のパートナーシップ|最近の事例をレビュー

その他、Anthropicの最近の動きとして、米ホワイトハウスのパブリックコメント募集に対する提案が挙げられる。これは、シリーズE後の3月6日に発表したもの。ホワイトハウスはAIにおける米国の主導権を握るため「AIアクションプラン」を発表しており、併せてパブリックコメントも募集していた。

Anthropicからの提案では、2026年後半から2027年初頭にかけ、「強力なAI」が出現すると予測。強力なAIとは、ノーベル賞受賞者に匹敵、あるいは、それを超える能力などを挙げている。そして、米国が主導権を取るためには、国家安全保障の側面からの各AIモデルの検証、輸出管理の強化など、米政府の「断固たる行動」が必要だと提案した。

Cisco、SalesforceのCVCが参加

シリーズEはベンチャーキャピタル(VC)が主導し、事業会社関係ではCisco Investments、Salesforce Venturesが参加した。資金の使途は、次世代システムの開発としている。

経営陣からのコメントは発表されていないが、プレスリリースの最後は「Anthropic は最先端の AI システムに対する理解を深め、人工知能が人類の進歩を促進することを確実にすることに注力し続ける」と結んでいる。




【世界のAILLMの技術動向調査やコンサルティングに興味がある方】 

世界のAI・LLMの技術動向調査や、ロングリスト調査、大学研究機関も含めた先進的な技術の研究動向ベンチマーク、市場調査、参入戦略立案などに興味がある方はこちら。

先端技術調査・コンサルティングサービスの詳細はこちら




  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

CONTACT

お問い合わせ・ご相談はこちら