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eVTOL開発の米スタートアップ・Archer AviationがポストIPOで650億円を調達。Anduril Industriesとの防衛用次世代機の共同開発も発表

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完全電動垂直離着陸機(eVTOL)開発スタートアップのArcher Aviationが2024年12月12日、$430m(約650億円)の資金調達に成功したことを発表した。同時に、Anduril Industriesと防衛用途の次世代航空機を共同開発するとも発表している。

航空機は1人を1キロメートルあたりに運ぶための二酸化炭素(CO2)排出量が他の輸送手段より大きく、業界としては持続可能な航空燃料(SAF)でカーボンニュートラルを進めようとしている。後述のように、資金の使途は防衛用航空機、ハイブリッド機開発であるものの、SAF以上のサステナビリティに向けた、さらなるイノベーションへの期待が、航空業界にあることがうかがえる。

開発中かつ型式認証で審査中のeVTOL「Midnight」

Archerは、2010年代後半よりサブスケールのテストなどを行っており、この頃、創業したといえよう。設立は2020年で、翌2021年にはニューヨーク証券取引所(NYSE)に上場。つまり、今回はポストIPOの資金調達となる。

開発中のeVTOL「Midnight」は、下の写真のように翼の前後に電動エンジン(およびプロペラ)を12発搭載。さらにバッテリーも6基搭載する。従来の4発ジェットエンジン機と同様に飛行中、どこかのエンジンに不具合が出ても他のエンジンで航行が続行できる、フェイルセーフを意図したものだ。

Midnight(Archerメディアキットより)

Midnightの米連邦航空局(FAA)からの型式認証は、最終耐空性基準の審査は完了し、その他の審査は進行中、もしくは、準備中としている。

2024年6月のテストでは、ホバリング状態から翼状態への移行に成功した。翼での飛行では、時速は100マイル(時速約160キロメートル)以上で飛んだという。Archerは、「これまでで最大のeVTOLが(ホバリングから翼への)移行に成功したと考える」とのステートメントを発した。

米国防総省からの受注目指す

資金調達には、既存投資家であるStellantis(Chrysler、Fiat、Peugeotなどの連合企業)と航空大手のUnited Airlinesが対応。さらに、中東の政府系ファンドなどが新規に投資を実施した。

参考記事:ユナイテッドがArcherと提携し、200機のeVTOL導入でエアタクシーへ参入

資金の使途は、Anduril Industriesとの防衛用次世代機の共同開発だ。Andurilは、ディープテックを活用した防衛装備品の開発企業。ドローンのような実際に戦地で使うようなものからネットワークの監視といった目に見えないものまで手掛ける。

共同開発する次世代機は、「米国防総省(DOD)の潜在的な公式プログラムをターゲットとするハイブリッド推進VTOLとなる予定」としており、将来的に想定されるコンペティションなどに備えたものと見られる。

ArcherのAdam Goldstein創業者兼CEOは、「われわれは、次世代の垂直離着陸機の迅速な設計、エンジニアリング、製造に関する深い専門知識を持つ。Andurilという仲間、そして新たに調達した資金で、高度な航空宇宙技術の開発と展開を加速していく」とコメントした。




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  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

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