音声の生成AIスタートアップ、ElevenLabsがシリーズCで約280億円を調達。著名企業とパートナーシップ
オーディオAIスタートアップのElevenLabsが、シリーズC資金調達ラウンドで$180m(約280億円)を確保したと2025年1月30日、発表した。
2022年、米ニューヨークで設立されたスタートアップで、AIによる音声の生成技術を開発する。生成可能な言語は、32に上る。
懸念されるオーディオAIの悪用とその対策
ElevenLabsは、Palantir Technologies出身のMati Staniszewski氏とGoogle出身のPiotr Dabkowski氏によって創業。2人は幼少期からの仲で、AIによってより良い映画などの吹き替えができればとのアイデアから、起業した。
2023年にベータ版のAIツールをリリースし、現在では新聞のThe Washington Post 、ニュース放送局のCNN、出版社のHarperCollins Publishers などといった顧客、パートナーを抱える。こうしたコンテンツを制作する企業は、オーディオブックなどのような形でAIによる音声にニーズがあると見られる。
一方、オーディオAIに対する懸念もある。それは、フェイクニュースへの悪用だ。日本でも2023年、岸田文雄前首相の姿と声を模したフェイク動画が拡散された。
こうした課題に対しElevenLabsは、AI使用におけるポリシー(指針)を策定。監視を行いポリシーに反するコンテンツをブロックする、特にリスクが高いと考えられる音声は生成を防止する、などを行う。
さらに2024年には、Amazon、Google、Meta、Microsoft、OpenAIなどとともに、AIの悪用から民主的な選挙を守る協定に署名した。同年は、米国・韓国・ロシアなどで大統領選挙があり、英国・フランス・日本などで総選挙が実施された。こうした選挙イヤーであることを踏まえた、協定である。
以前の資金調達は、2024年1月のシリーズB資金調達ラウンドで、このときは$80m(約119億円。当時レート)を確保した。
AARが前年比3倍超に
シリーズCには、著名ベンチャーキャピタル(VC)のa16z、ICONIQ Growthが主導。事業会社では、Salesforceのコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)が対応しており、こちらは既存投資家である。
正式発表前よりシリーズCの実施が報じられていた。それによると、シリーズBより調達額が大きく増えている要因として、ここまで述べた事業基盤、悪用への対策を行うElevenLabsの姿勢の他、良好な財務状況も影響しているという。
2024年10〜11月のARR(年間経常利益。直近月の経常利益を12倍したもの)は、$80m〜90m(約125億〜140億円)と推定されている。2023年は$25m(約39億円。本段落は比較のため2024年1月のレートとした)だったため、こちらも3倍以上の伸びということだ。
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