鉄をベースにしたバッテリーを開発するForm Energy 、シリーズFで600億円超を調達。これを元手に工場拡張の模様
「アイアン-エアバッテリーシステム」と呼ばれる方式のバッテリーを開発する米Form Energyは、シリーズF資金調達ラウンドで$405m(約625億円)を確保した。2024年10月9日、発表した。
発電量が不安定となりがちな再生可能エネルギーの活用やスマートグリッドをさらに効率化していくためには、大容量バッテリーが不可欠となる。この点で、Form Energyのバッテリーは100時間の蓄電が可能であり、投資家の期待から巨額の資金獲得につながった。
鉄の酸化・還元を応用したバッテリー
Form Energyは、Tesla出身のMateo Jaramillo 氏(現CEO)、ソフトウェア開発者のMarco Ferrara 氏(現最高デジタル責任者〈CDO〉)らによって2017年、設立。
これまで工場や地域単位で利用される蓄電システムでは、リチウムイオンバッテリーやナトリウムイオンバッテリーが利用されてきたが、Form Energy のバッテリーには鉄が使われている。鉄の酸化反応、還元反応を応用することで、バッテリー放電時には鉄をさびさせ酸素を吸収、充電時にはさびが鉄に戻り酸素を放出する仕組みだ。
Form Energy の説明では、1メガワットのシステム構築では「0.5エーカー(約2000平方メートル)の土地で構成される」という。この点では、同様の目的を持ったナトリウムイオンバッテリーである日本ガイシのNAS電池がおよそ36平方メートルで1メガワットの出力となっているので、Form Energyのアイアン-エアバッテリーシステムは効率が悪いと感じられる。
参考記事:2024年時点でナトリウムイオン電池はどこまで進化しているか|電池としての特徴、開発する各社の動向
しかし、アイアン-エアバッテリーシステムは鉄以外の重金属を使っていないため熱暴走のリスクはないとしている。また、鉄を使うのでリサイクル性に優れ、コストが低い点も特徴だ。
資金調達に先立つ2024年8月には、電力卸売協同組合のGreat River Energyがミネソタ州にアイアン-エアバッテリーシステムを利用した蓄電施設の建設を開始した。
なお、ウェストバージニア州にあるForm Energyの工場は、かつて製鉄所だった。当地のプロダクトの歴史を継承しつつ、サステナブルのビジネスへの移行を実現したということになる。
Form Energyの企業紹介動画
GE Vernovaが出資、資金面以外でも協力関係に
シリーズF資金調達ラウンドには、新規投資家としてGE Vernova が応じた。その他、ベンチャーキャピタルを中心とした既存投資家も出資している。また、Form Energy とGE Vernovaは、製造と商業展開において協力する覚書を交わしたという。
この5日後には、既存工場の拡張が発表されており、シリーズFの資金が活用された模様だ。
Jaramillo CEOは次のようにコメントした。
「より信頼性が高く、クリーンで、レジリエンスな電力網を実現する、複数日間蓄電可能なエネルギー貯蔵ソリューションの展開という、当社の使命を果たすための岐路に立っている。シリーズFの資金調達は、バッテリー製造をさらに拡大させ、新しい雇用を創出し、より効率的でスケーラブルなプロセスの開発を進めることにつながる。また米国のイノベーションを促進するだろう」
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