高温超電導線のMetOxがシリーズB追加ラウンドで37億4000万円の資金調達を完了。クリーンエネルギーの普及に寄与
米国を拠点とし大手高温超伝導(HTS)線を開発・製造するMetOx Internationalは2024年9月23日、シリーズB追加ラウンドで$25m(37億4000万円)の資金調達を完了した。
MetOxは、高温超伝導(HTS)技術を専門とする革新的な企業。同社の主力製品は「Xeus Wire」と呼ばれる先進的な超伝導線で、エネルギー分野に革命をもたらすことを目指している。
独自の高温超電導技術でエネルギー分野に革命をもたらすXeus
MetOxはミッションとして、高温超伝導(HTS)技術を通じクリーンで信頼性が高く豊富な電力の供給を掲げる。同社は独自のHTS技術であるXeus Wireを開発し、エネルギー業界の変革を目指す。
高温超伝導は、比較的高い温度で電気抵抗が完全にゼロになる現象。一般的には、液体窒素の沸点(77K、約-196℃)を超える温度で超伝導状態に移行する物質が、「高温超伝導体」と呼ばれる。特に、銅酸化物系の材料でこの現象が観察されており、代表的な例として挙げられるのがイットリウムバリウム銅酸化物(YBCO)。YBCOは93K(約-180℃)で超伝導を示す。
常圧下での最高超伝導転移温度は、水銀系銅酸化物が記録した135K(約-138℃)である。
従来の超伝導体とは異なり、高温超伝導のメカニズムはいまだ完全に解明されていない。さらに高い温度で超伝導を示す物質の探索やメカニズムの解明も、精力的に進められている。この研究は、送電ケーブルや強力な電磁石など、エネルギーや工業分野での多様な応用が期待されている。
MetOxが開発したXeusワイヤーは、従来の導体に比べて高効率の送電・配電を実現。この技術により、送配電時のエネルギーロスが大幅に削減され、発電所から消費者まで、より多くの電力を効率的に供給できるようになる。また、Xeusを使って効率的な送配電インフラを構築すれば、再生可能エネルギーの大規模な導入、クリーンエネルギーの普及を加速させる役割も果たすとしている。
2023年12月にも、投資家の実名は伏せられたものの資金調達を行っている。
資金調達の目的は米国拠点の製造能力拡大
今回の資金調達では、ベンチャーキャピタル(VC)を中心とする複数の投資家が応じた。MetOxは、主要なエネルギー転換アプリケーション向けのXeusが急速な拡大を示しているため投資家の強い信頼につながったと訴求する。
調達した資金は、MetOxの米国拠点の製造能力を拡大させ、国内および世界で急増する高温超伝導ソリューションの需要の対応に活用するという。
「今回の資金調達は、当社の高度な電力供給技術を通じてエネルギーおよびテクノロジー分野に革新をもたらし、顧客やパートナーへの供給を加速する上で極めて重要な一歩だ。HTS技術は、電力網の効率を大幅に向上させるだけでなく、従来の技術では実現不可能、あるいは非常に困難であった技術開発を可能にするため、不可欠な要素である」と、MetOxのCEOであるBud Vos氏は述べた。
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