SMR開発のValar Atomicsが29億円を確保。VCからシードラウンドで調達

小型モジュール炉(SMR)を開発する米スタートアップ、Valar Atomicsがシードラウンドで$19m(約29億円)を調達した。2025年2月20日、米メディア・TechCrunchが報じ、Valar Atomicsもオフィシャルサイトで同記事へのリンクを張り、追認している。
Valar Atomicsは、2023年に設立。創業者兼CEOのIsaiah Taylor氏は起業家で、SMRや原子力に関する企業を立ち上げるのは同社が初めてだが、祖父はマンハッタン計画に携わった物理学者だという。
高温ガス炉型のSMRを開発
SMRの発電におけるプロセスは、基本的に従来の原子力発電と変わらない。「小型モジュール」という言葉の通り、1基の原子炉の発電量は小さく(出力300メガワット以下)、炉を電力需要に合った数を用意しモジュール化することで、個々の発電所の設計を柔軟にできる特徴がある。また、炉が小型でモジュール化する構造から、各部位の量産によってコストダウンを図れるメリットもある。
一方、冷却の方法は従来型原子力発電と、多少の違いが存在。現在、世界中で行われている原子力発電は、水によって冷却するのが一般的だ。しかし、SMRの冷却は水を利用する方法もあれば、炭酸ガスや液体金属といったこれまでの原子力発電では断念された、あるいは、研究段階の冷却方法を用いられる場合がある。
この点で、Valar Atomicsはヘリウムを冷却材にした高温ガス炉を開発する。高温ガス炉は、安全性が高いと見られることから大型原子炉でも研究されており、日本の企業、研究機関も開発する構えを見せる。
また、Valar Atomicsが核燃料として採用するのは、X-EnergyのTRISO。X-EnergyもSMRを開発するスタートアップだが、TRISOはX-Energy、Valar Atomics以外のSMR開発企業も採用する燃料だ。
参考記事:SMR開発のX-EnergyがシリーズC1で約761億円を調達。TRISO-X燃料製造施設の建設を推進
TRISO(X-Energyメディアキットより)
高温ガス炉は、従来の原子力発電より炉内を高温にすることで発電効率を向上させられるのが特徴だが、Valar Atomicsが開発するものももちろん同じ。900度まで温度を上げ、これは従来型原子炉の3倍になるという。
企業としてのValar Atomicsの動向を見ると、2023年11月にプレシードラウンドとして$1.5m(約2億円)を、単一のベンチャーキャピタル(VC)より調達している。
資金使途は試験炉の開発
シードラウンドには、複数のVCが参加。リードインベスターを務めたのは、プレシードと同じVCだ。
資金の使途は、試験炉の開発となる模様。また、前出のTechCrunchによるとその後、商業規模と同等の試験炉を2基、つくるという。この点について、Taylor CEOは「私たちは最初のもの、2番目、3番目と作っていくつもりだ。それが自然に工場(発電所)へと進化していくだろう」と述べている。
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