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(特集)2021年デジタルヘルスの技術動向 ~健康・ヘルスケアモニタリング / 解析~

INDEX目次

デジタルヘルスケア領域は様々な企業が新規事業として注目しているが、その対象領域は多岐に渡り、漫然と情報収集するだけではイノベーションの変化ポイントがわかりにくく、追い続けるのが困難な領域でもある。

そこで今回は、筆者目線で2021年に注目したいデジタルヘルス領域の中でも、特に近年注目されている健康・ヘルスケアのモニタリングや解析技術の動向・技術トレンドの全体像について解説していく。新規事業で当該分野を検討している企業の担当者や、当該分野における研究開発を行っている担当者の方にとって、デジタルヘルスの技術動向の全体感を掴むのに参考になれば幸いである。

なお、ここでは自宅や日常での健康管理やポイントオブケア(在宅や患者に近い診療所での治療)の領域において、ウェアラブルデバイスなどを活用し生体センシングを行うような技術を取り上げている。


健康・ヘルスケアで重要な23の技術テーマ

以下に、現在健康・ヘルスケアモニタリング / 解析技術で注目されている重要テーマについて整理したものを挙げる。下記だけではなく、色々な整理の仕方があるが、1つの整理の形として捉えていただきたい。

筆者調査により作成

大きくは以下5大領域、23の技術テーマ群を挙げている。

1. 重要バイタルセンシング
測定できるだけで付加価値が高いが、センシングが簡単ではない領域である。血糖値や血圧をウェアラブルで連続的にモニタリングすることは、医療からヘルスケアまで幅広くインパクトがあり、実用化が模索されてきた。近年はコロナウイルスの影響もあり、SpO2(血中酸素濃度)も注目されている。

2. 新規バイオマーカーの活用
まだ多くは未活用であるが、バイオマーカーとして非常に興味深い生体データ群のことを指す。

3. 生体データ解析
単体の生体パラメーターのセンシングというよりは、解析要素が強い領域である。ECG・心電データも最近はAIが適用され、データ解析の技術開発が盛んとなっている。

4. 重大疾患早期検知・スクリーニング
がん・アルツハイマー・脳卒中などの死亡要因でTOP10に入るような、命や生活に重大な影響を与える疾患の早期発見やスクリーニング技術を対象としている。

5. その他・COVID-19関連
やや3の生体データ解析に近いが、COVID-19関連でウェアラブルデバイスを活用した感染スクリーニングや、自宅検査キット、また最近米国FDAでBreakthrough Device認定を受けることが多い神経刺激デバイスによる治療などを対象としている。

今回はこの5つの領域・23の技術群において、主要なものをピックアップして全体感を解説している。

重要バイタルセンシング

血圧:FDAの認可を取れるかがカギ

従来、カフによる測定装置が長く使われてきたが、カフは毎回測定の度に腕をデバイスに通さないといけないため、連続的な血圧データの測定が難しい。一方で、連続的に血圧を測定することができるようになると、健康モニタリングにおいて重要な意味を持つことになる。例えば高血圧は一般的に脳、腎臓、心臓の病気に関連しており、そうした兆候が検知できるようになる可能性もある。そこでウェアラブルデバイスを中心に非カフで血圧をモニタリングする技術が開発されている。

画像クレジット:Aktiiaプレスリリース

市場では主にフォトプレチスモグラフィー(PPG)という方式によって、腕につけられたデバイスからLEDで光を照射し、その反射光を読み取ることによって血圧を測定しようとしているものが多い。

SamsungはGalaxy Watch3、またはGalaxy Watch Active2で血圧測定機能を実装したことを今年1月に発表している。ただしこれはCEマークであり、欧州での利用に限られる。また、英国ベンチャー企業のAktiiaも1月にスマートウォッチ型の血圧測定デバイスでCEマークを取得したことを発表した。このように、直近2-3か月でウェアラブルでの血圧測定デバイスが相次いでCEマークを取得している状況である。

今後のポイントは、米国FDAの医療機器認定を受けられるかどうかにかかっているが、FDAの認可は業界に大きな影響を与えることから、慎重な姿勢を崩していない。

血圧モニタリングの海外ベンチャーの参考記事はこちら
参考: CEマーク取得し、英国で展開を開始した血圧ウェアラブルデバイスのAktiia
参考: BtoCを狙うレーダーベースウェアラブル血圧モニタリングのCardieX

血糖値:血圧と比べると実用化はまだ遠い

長年「聖杯」とされ、血圧モニタリング以上に様々なベンチャー企業が技術開発に挑んできた血糖値・グルコースモニタリングであるが、現在表に出てきているファクトからすると、まだ血圧に比べて実用化は遠い印象である。

血糖値は、フィンガープリックという指に針を刺す器具で血液を採取して測定してきたが、糖尿病の患者にとって負担が大きい。そこで市場ではAbbottのフリースタイルリブレやDexcomのG6のような皮膚下にマイクロニードルを刺すパッチ型のデバイスが登場し、一気に市場に浸透しているのが現状である。一方で、このマイクロニードル型は1~2週間程度でデバイスを交換する必要があることから、ややその連続モニタリングとしての利用に制約がある。

画像クレジット:Biolinqプレスリリース

そこで、様々な大手・ベンチャー企業が分光法や、電磁波を使ったもの、涙をバイオマーカーにしたものなど、取り組んできたが、非侵襲技術で実用化できている企業はいない。本メディアでもいくつかのベンチャー企業や大学研究機関の取り組みを取り上げてきているが、まだ有力な研究成果が表に出ていないというのが現状である。

血糖値モニタリングの海外大手・ベンチャーの参考記事はこちら。
参考:SamsungとAppleが次のモデルで非侵襲血糖値モニタリング機能を付けるという報道は本当か
参考:非侵襲グルコースモニタリングデバイスを開発するKNOW LABSがメイヨークリニックと研究契約を締結

SpO2:健康用の参考値としてウェアラブルで表示が始まる

2020年9月のApple EventでApple Watch Series6を発表し、血中酸素飽和度(SpO2)センサーの搭載を発表した。Fitbitは先行して、2020年1月にSpO2の表示が可能になったことを発表し、まずは米国から始まって、2月からは日本でも使えるようになった。様々なウェアラブルデバイスでSpO2が注目されている。

Photo by Tetiana SHYSHKINA on Unsplash

SpO2は慢性呼吸器疾患や、睡眠時無呼吸症候群、コロナウイルスの病状とも関連があり、医療機器として認定されているパルスオキシメーターは臨床現場で使われている。一方で、FitbitやApple Watchなどのウェアラブルデバイスにおいては、まだ米国FDAの医療機器認定は取得できておらず、あくまで健康のための参考指標という位置づけとなっている。

今後、ウェアラブルデバイスでSpO2が医療機器認定を取得できるかどうかは定点観測の重要なポイントとなる。

SpO2についての詳細はこちら。
参考:SPO2がわかると何が嬉しいのか?

生体データ解析

ECG(心電)解析:実用化が進む心電データ解析

この領域は非常にホットな市場となっている。ECGのモニタリングは重大な発作や疾患と結びついている可能性もあり、命に関わる場合もある。Apple WatchやFitbit Sense等の高機能ウェアラブルデバイスでも心電は測定が可能となっているが、これはあくまでECG活用の入り口に立ったに過ぎない。

さらに進んだところでは、①ECGの連続モニタリング、②解析高度化による判定可能な不整脈の種類の増加、が技術動向の流れとしてある。ECG(心電)は様々なモニタリングソリューションをベンチャー企業が開発し、すでに実用化している企業も多く、資金調達も多額となるケースが多い。付加価値がはっきりしており、医療機器としてマネタイズしやすいことが要因と考えられる。

https://www.youtube.com/watch?v=muCn3bXrr9Q
Alivecor公開の動画への直リンク
心電を測定する卓上モバイルデバイス

ECGの連続モニタリングについてはこちらも参考。
参考:医療用ECGウェアラブルパッチのVivaLNKが6分間歩行試験用ソリューションを発表

解析高度化による判定可能な不整脈の種類の増加、についてはこちらも参考。
参考:心電センサ・解析を手掛けるAliveCorがシリーズEで65m$の資金を調達

メンタルヘルス:生体データから診断する技術が実用化なるか?

近年、メンタルヘルス領域が注目されている。日本においても、過去数年間、精神疾患により医療機関を訪れる患者数は毎年増加しており、厚生労働省によると2000年代前半では258万人だったのに対し、2017年には419万人と大きく拡大している(※1)。

世界的に見ても、Hannah Ritchie and Max Roser (2018) (Our World in Data、※2)によると、何かしらメンタルヘルスの症状を持つ人口は世界で実に7.9億人も存在しており、世界の10人に1人の割合であるという。

参考:世界のメンタルヘルス市場のまとめ

こうした領域に対して、ストレスモニタリングの技術や、メンタルヘルスの予測技術が開発推進されている。例えばストレスモニタリングで有名な海外スタートアップと言えば、Spire Healthであろう。米国カリフォルニアを拠点とするこのベンチャー企業はタグ型のデバイスを開発し、呼吸・脈拍・加速度からストレスをモニタリングする。すでに15万人以上のユーザーを抱える同社であるが、当初はBtoCであったのに対し、近年はBtoBの医療領域のビジネスへピボットしようとしている。この「ストレス」におけるウェルネス領域でのマネタイズがいかに難しいかがわかる。

一方で、健康経営で最初に実績を作りながら、医療領域に進出をしようというメンタルヘルスモニタリングベンチャーがいる。オーストラリアのMedibioはその代表的な企業だ。一般消費者向けにすでに出回っているウェアラブルデバイスであるFitbit、Garminのデータと接続し、心拍数、活動量、睡眠データを解析することで、客観的にメンタルヘルス状態を判定する技術となっている。

同社は現在、米国FDAでの医療機器としての承認を受けるプロセスにトライしている。
参考:メンタルヘルスをウェアラブルで取得する生体データを使って診断する技術を開発するMedibio

睡眠解析:本格的な睡眠データの活用はこれから

スリープテックは数年前から様々なベンチャー企業が登場しており、健康に深く関わる睡眠データも注目が高い。毎年米国ラスベガスで開催されているCESでもスリープテックコーナーは、大きな区画となっている。

一方で、現時点でよく資金を集めているのは、AIベッド・マットレスや機能性枕などの寝具や、または医療機器領域で睡眠時無呼吸症候群をモニタリングするためのデバイス、またはOuraやDreemなどの睡眠計測デバイスとなっており、本格的に睡眠データを解析するようなアプローチを取っている企業は少ない。一部のデータに強い企業が、今後睡眠データをどのように活用するのかが1つの注目ポイントとなる。

画像クレジット:Bryteプレスキットより

AI寝具のベンチャーに関してはこちらも参考
参考:AI睡眠ベッドを開発するスリープテックBryte

睡眠時無呼吸症候群のモニタリングに関してはこちらも参考
参考:イスラエル企業がウェアラブルのSpryを買収し、睡眠時無呼吸症候群の連続モニタリングを目指す

睡眠計測デバイスについてはこちらも参考
参考:睡眠モニタリングデバイスのOura Ringは生体センシングの新しいプラットフォームになるか?

一方で、Sleep Score Labのように睡眠科学の観点でアプローチを行うベンチャー企業も出てきており、今後の睡眠データ活用の動きは注目である。
参考:Sleep Score Labが6,500万時間の睡眠データを活用したソリューション開発支援を発表

病状悪化兆候検知:多くが開発途上も、ソリューション化は進む

既存の多くの技術は現状の状態評価に焦点をあてているが、一方で健康状態を予測する技術というのは今後のデジタルヘルスにおいて非常に大事な要素となっており、そうした予測・兆候検知に取り組むベンチャー企業がいる。

昨年シリーズCで100億円以上の資金調達を行った、ソフトバンクビジョンファンドも支援するBiofourmisは、医療グレードのウェアラブルデバイスで取得した生体データやECGデータを解析し、病状が悪化する兆候を検知する技術の開発に取り組んでいる。

参考:ヘルスケア・医療データ解析ベンチャーのBiofourmisがソフトバンクビジョンファンドから1億ドルを調達

この領域は、他にも生体データの解析に長けたベンチャー企業も存在しており、今後のソリューション開発が期待されるところだ。

高齢者モニタリング:技術的には実用化、導入が進むか要注目

先進国を中心に高齢化は進んでおり、欧米・中国からも高齢者モニタリングの技術が登場している。ウェアラブルデバイスや自宅に取り付けるカメラ、またはレーダーによって高齢者の状態をモニタリングし、転倒が起きた際には家族にアラートで知らせるなどのソリューションが実用化され始めているのだ。

転倒というのは、若い人にとっては何でもないことであるが、高齢者にとっては重大事故につながる可能性があるインシデントだ。東京消防庁の「救急搬送データ」1)によると、65歳以上を対象とした救急搬送された事故の内、転倒・転落による事故は最も多く、全体の約8割を占めたという。

こうした背景から、イスラエルの4DレーダーベンチャーVayyar Imagingは、スマートホームにおける高齢者モニタリングのシステムを提案していたり、カナダのAltumView SystemsはカメラベースAIで高齢者の行動解析を行い、転倒検知を行うことを提案している。

一方で本格的な市場での導入はまだこれからと見られ、今年、こうした高齢者向けソリューションがどのように市場で受け入れられるか、その進捗がポイントとなる。

CES2021でも様々な高齢者モニタリング技術が展示されていた。(詳細はこちら

重大疾患早期検知・スクリーニング

このセグメントでは、がん・アルツハイマー・脳卒中などの命や生活に重大な影響を及ぼす疾患で、かつ病気になる人口が多いものを取り上げている。

がん:呼気から肺がんをスクリーニングする取り組み

がんの早期検知は、画像をAIで解析することで人目では見つけることができない兆候を検出するような技術や、呼気から化学センサにより、がんのバイオマーカーを検出するような非侵襲技術が研究開発されているが、まだ実用化前のものとなっている。

例えば英国のベンチャー企業のOwlston Medicalは、呼気により肺がんのバイオマーカーを検出する技術の研究開発に取り組んでいる。LuCIDという名前の研究プロジェクトは、英国国民保健サービス(NHS)から助成を受け、これまで4,000人の患者が臨床試験に参加をしている。現在欧州の26か所の臨床現場が協力し、臨床研究が行われている。

参考:LuCIDのページはこちら

アルツハイマー:脳波デバイスやウェアラブルなどが活用

アルツハイマー・認知症も多くの研究機関が取り組んでいる分野だ。

例えば、CES2021でも展示があった韓国のベンチャー企業iMediSyncは、ゲルフリーの脳波センシングデバイスを開発。韓国では医療機器認定を取得し、アルツハイマーを早期検知するような研究を行っている。他にも一般的なウェアラブルデバイスのデータを解析することで、アルツハイマーや認知症の兆候検知ができないか試みる研究も大学を中心に実施されている(例えばAlzheimer's Research UKは人工知能を活用した神経変性疾患の検知に取り組んでいる)。

画像クレジット:iMediSync CES2021展示ブースより

iMediSyncの紹介はこちらも参考。
参考:【CES2021】デジタルヘルス・ウェアラブルの最新技術や海外スタートアップ

新規バイオマーカーの活用

汗:多様なバイオマーカーを含む将来性のある領域

汗は多様な成分を含み、涙や尿などの他のバイオマーカーに比べて採取の頻度を高く取れるため、連続的なモニタリングができる可能性があることで有望なバイオマーカーとなっている。

汗を解析することで、例えば以下のようなことがわかると言われている。

  • コルチゾール → 燃え尽き症候群や肥満などのストレス関連の状態把握
  • 汗の量・塩分濃度 → 熱中症や脱水症状解析に向けた状態把握
  • ビタミンC → 栄養モニタリング
  • 乳酸 → 集中治療後のモニタリングや、スポーツ向けモニタリング

汗のモニタリングが可能な技術を開発するスタートアップはそんなに数が多いわけではないが、スイステックのXsensioはこの領域で長く研究開発を続けている有望企業の1社だ。

参考:ウェアラブル汗センサを開発するスイスベンチャーXsensio

ただし、まだ研究開発用途向けに展開されているのみであり、アプリケーションとして実用化できているわけではない。汗はその時々で成分が大きく変わるものであり、汗の量も変わるため、継続して安定した量の汗を収集できるか、変化する成分量をどう捉えるか、などの技術的課題がある。こうした課題を突破して、具体的な用途が実現するかどうかが今後見るべきポイントとなる。

音声(Vocal Biomarker):イノベーションになり得る声の解析

音声(こえ)はスマートフォンを通して簡単に録音することができ、非侵襲で採集しやすいデータであり、バイオマーカーとして使える可能性が注目され、様々な音声解析ベンチャーや大学研究機関によって研究開発がされている。

この「声」というバイオマーカーを使って何ができるのか。この領域はまだ確立されていないため、現時点では様々な可能性が模索されている。例えば、以下のような非侵襲での検出・診断用途が示唆されている。

  • メンタルヘルス、うつ病
  • パーキンソン病などの神経疾患
  • 喘息、肺炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの呼吸器系疾患
  • COVID-19
  • 冠動脈疾患(心疾患) など

当メディアでもこれまでいくつか事例を取り上げているので、以下も参考。
参考:音声で健康状態を検知するボーカルバイオマーカーの実用化を目指すVocalis Health
参考:MITの音声解析AIによるCOVID-19検出

尿:技術が確立され始めている尿センシング

尿も様々なバイオマーカーが含まれている、生体センシング対象としては非常に有望な領域だ。尿のバイオマーカーの分析は、以前から様々な企業や研究機関が研究開発を行ってきているが、技術を実用化した代表的な企業がイスラエルのHealthy.ioだ。

Healthy.ioは2019年にシリーズCで60m$もの資金を調達。FDAの医療機器認証を取得している同社のシステムは、自宅で尿サンプルを専用のキットで採取し、スマホで撮影した画像をAIで解析することで、自宅で尿検査ができるようにした(ただし病院で行う尿検査と同じことができるわけではない点は注意)。

https://www.youtube.com/watch?v=dGyOwOFqXCI
Healthy.io公開の動画への直リンク
どのように使うのか動画内後半でイメージがわかる

腎臓検査や感染症検査などの特定用途では技術は実用化され始めたため、この1年でどのように市場に浸透していくのかが問われている。

栄養・ビタミン:研究中のビタミンモニタリング技術

体内の栄養・ビタミン状態のセンシング技術は現時点ではまだ実用化できていないという認識だ。過去にビタミンをセンシングするようなデバイスも出たことはあるが、あまり上手く機能していないように見える。

例えば、カリフォルニア大学サンディエゴ校が、汗をウェアラブルでセンシングし、成分のビタミンCをモニタリングする技術の研究に取り組んでいる。

参考:ウェアラブル汗センサからビタミンCを測定する技術が登場 ~カリフォルニア大学サンディエゴ校の研究~

CES2021でも日本で話題となったBisuも尿検査から栄養状態をセンシングするシステムを開発している。(ただし、同社は栄養という表現をしているが、いわゆるビタミンなどは測定パラメーターには入っていない)

参考:【CES2021】パーソナライズ栄養管理の実用化を目指すスタートアップ

その他・COVID-19関連

COVID-19×ウェアラブル:実用化に向けて研究開発が急速に進む

昨年、世界中に大きな影響を与え、現在もまだ続いているCOVID-19であるが、この影響は長く続くことになるとも言われている。そこで、昨年多くの企業・大学・政府機関でコロナウイルスへの感染検知にFitbitやApple Watchなどの一般的なウェアラブルデバイスが使えないか模索する動きが起こった。

これらの多くの動きは、昨年から大規模な研究・実験を行っており、心拍数や呼吸などの大量の生体データを解析して、ウイルス感染のスクリーニングができるかどうかの研究結果が今年出てくると想定される。

Fitbitなどの一般ウェアラブルを使った研究はこちらを参考。

参考:スタンフォードヘルスケアイノベーションラボで行われているウェアラブルでCOVID-19を検出する研究を解説
参考:FitbitがCOVID-19を検出するための研究として米国陸軍賞を受賞

一方で、今月(3月)に医療グレードウェアラブルで欧州CEマークを取得したベンチャー企業が出現した。この領域は先に医療グレードウェアラブルで実用化されそうである。

参考:スマートウォッチのEmpaticaがCOVID-19の初期症状検出で欧州で初めてCEマークを取得
参考:米国国防総省が医療用ウェアラブルでCOVID-19を早期検知するフィリップス・BioIntelliSense・コロラド大学の共同研究に資金助成


以上、大まかにであるが、デジタルヘルスで重要な各主要分野の動向・トレンドを解説した。

デジタルヘルスの領域は、特に生体データを使うような技術エリアにおいては、生体データと疾患や健康面の相関を研究するところから始めるケースもあり、また応用化するとしても臨床試験が必要になるため、実用化するまでに長期化する傾向がある。

すぐに実用化しないケースも多く、企業が新規事業として取り組む際には、こうした実用化タイミングの見極めが必要になったり、長期スパンで見ていく必要があるだろう。


【世界のデジタルヘルスベンチャーや技術動向に興味ある方】

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参考文献:

1) 厚生労働省「精神疾患のデータ」より(リンクはこちら

2) 高齢者の事故の状況について -「人口動態調査」調査票情報及び「救急搬送データ」分析-(リンクはこちら


  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

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