シリコンバレーベンチャーのAmpceraが特許出願中の全固体電池技術について発表
2021年4月13日、米国シリコンバレーベンチャーであるAmpceraが、現在特許出願中の全固体電池技術についての概要を発表した。Ampceraは固体電解質材料を開発・提供しているベンチャー企業であり、独自の固体電解質技術を保有している。
固体電解質に内部過熱可能な材料を埋め込む
さて、今回発表された技術であるが、全固体電池は一般に安全性が高く、作動動作温度も広く、液漏れを防ぐための容器や機構も必要ないため形状にある程度の自由が利くこと、等のメリットが言われている。一方で、電解質のイオン伝導度は必ずしも高くなく、とりわけ、極寒で過酷な気候の環境下においては、急速充電および加速が問題となる。そこで同社は電解質に誘導加熱可能な材料、または抵抗加熱が可能な材料を埋め込むことで、環境温度に応じて動的に固体電解質を加熱し、イオン伝導度を高く維持することができるという。
新しい固体電池設計により、固体電解質と正極および負極との間の界面抵抗が大幅に減少する。導電率の向上と界面抵抗の低減の組み合わせにより、全固体電池を数分で急速に充電できるという。
Ampceraの共同創設者兼CTOのHui Du氏はこう述べている。
「Ampceraの技術ポートフォリオには、高性能の固体電解質、スケーラブルな製造プロセス、革新的な固体電池の設計が含まれます。固体電池の超高速充電のためのこの新しい技術を発表できることを非常に嬉しく思います。次のステップは、 Ampceraと当社の自動車OEMパートナーによるさらなる性能試験のための全固体電池セルに、この技術が適用されます。」
同社は2025年までに、同社が開発する固体電解質およびバッテリー技術により、10分未満の超高速充電と、重量エネルギー密度:450Wh/kg、体積エネルギー密度:1400Wh/Lの実現を狙う。大量生産のための拡張された製造プロセスを使用すると、kwhあたり75ドル未満の競争力のあるバッテリーコストを達成できると主張している。
ロールツーロールでの量産全固体電池の実用化を狙う
同社は、電気自動車向けの量産全固体電池の実用化を狙っている。2020年6月には低コストでスケーラブルな固体電解質膜の技術を開発したと発表した。
厚さが25μm、室温でのリチウムイオン伝導度が1mS / cmを超え、リチウム金属アノードに対して安定している高性能固体電解質膜により、500wh/kgのエネルギー密度の固体リチウム金属電池が可能になると主張している。
(補足)従来、固体電解質はリチウムイオン伝導率が低く実用化は困難と見られていたが、近年、リチウムイオン伝導率の高い材料が相次いで見つかっており、研究レベルや小型セルでは、様々な研究機関や企業が1mS/cm以上の伝導率を実現するセルの発表がされている。東工大が発見した有名なLGPSは12mS/cmとなっており、電解液と同等のイオン伝導度であるが、実はこれでも既存の液系電池を凌駕する特性は出ないとされている。なお、東工大はその後、25mS/cmの新しい高リチウムイオン伝導度の素材を発見し、発表している。
同社の全固体電池は、電解質にセラミックポリマー複合材を使っており、米国エネルギー省DOEのSBIRプログラムによる助成で、ロールツーロールプロセスでコインセル・ポーチセルの形で製造する技術が開発されている。
ニッケルリッチ正極やシリコン負極、リチウム金属などの先進リチウムイオン電池に関する技術動向の全体像を知りたい方はこちら。
参考:(特集)車載向け次世代電池の技術開発動向① ~先進リチウムイオン電池~
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参考文献:
1) Interally heatable battery, internally heatable battery system, internally heatable battery method, and electric vehicle comprising the same, WO2021034423A2
3) Ampcera Announces a Low-Cost and Scalable Solid Electrolyte Technology for Solid-State Batteries
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