BMWが2025年より前に全固体電池を搭載したデモ車両を出すと発表
2021年4月21日、BMWは電池における専門性を強化することを発表し、発表の中で、2025年よりかなり早いタイミングで全固体電池を搭載したデモンストレーション車両を出すことを明らかにした。
自動車メーカー側で加速する車載向け次世代電池セル開発
話題となることが多い全固体電池に限らず、既存の液系リチウムイオン電池も含めてその電池セル開発は加速している。
フォルクスワーゲンは液系のリチウムイオン電池を発展させながら、QuantumScapeと共同で全固体電池の開発も並行して行っている。(フォルクスワーゲンは全固体電池のイメージが強いが、決して全固体電池に全振りをしているわけではないことがPower Dayなどの発表からわかる点は注意)
参考:フォルクスワーゲンが2030年までの電池ロードマップを公開、さらにEVを強化へ
また、先日発表のあった通り、GMはリチウム金属を負極に使ったリチウムイオン電池をSolid Energy Systemsと共同開発している。日本のトヨタにおいても、全固体電池を搭載した試作車を2021年に出し、2020年代前半に実用化する計画があることを発表している。
参考:GMが提携したリチウム金属電池ベンチャーのSolid Energy Systemの解説
そして今回、BMWからも全固体電池についての言及があり、BMWが2025年より前に、全固体電池を搭載したデモ車両を出すことが明らかにされた。
BMWは2030年までに売上の50%をEVにする方針
BMWグループは以前より、自動車メーカーの中では電気自動車に力を入れてきた企業である。そのBMWは電気自動車のロードマップについてはかなりアグレッシブな計画を立てている。
同社は2025年までに、全電気モデルの車種の販売を年間平均50%以上、2020年の10倍以上の販売台数に増やす予定であり、合計で約200万台の全電気自動車を納入する予定だ。また2030年までには、世界の売上高の少なくとも50%が全電気自動車で構成されることを計画している。そして、同社のバッテリーに関する方針は、「2030年までに2倍のエネルギー密度を実現する(現行の航続距離をおおよそ2倍にする)」である。
そうした方針の元、BMWはつい先日、Neue Klasse(英語で新しいクラスという意味)という、60年前にあった車種ブランド名を新しい電動化アーキテクチャの名前で使うことを発表している。
全固体電池技術について集中的に研究を行っている
BMWは今回の発表の中で、前述のNeue Klasseのための新しい電池セル技術として、全固体電池技術についての集中的な研究を行っていることを明らかにした。
同社は2019年に次世代バッテリーセル及び製造技術の開発を牽引するための研究開発機能として、バッテリーセルコンピテントセンター(Battery Cell Competent Centre)を設立している。この研究開発センターには合計2億ユーロが投資され、2019年発表当時で200人の電池研究者が在籍していることが明らかにされている。
BMW AGの取締役会メンバーであるフランク・ウェーバー氏はこう述べている。
「私たちは全固体電池技術について集中的な研究を行っています。この10年間の終わりまでに、自動車互換の全固体電池を連続生産に実装する予定です。この技術を搭載した最初のデモンストレーター車両を展示する予定で、それは2025年よりかなり前のことです。」
BMWは全固体電池でSolid Powerと提携
BMWは2017年に米国の全固体電池を開発するベンチャー企業Solid Powerと提携を発表。電気自動車用の全固体電池の共同開発を行っている。なお、出資も行っているようであるが、出資額は非公表となっている。このベンチャーにはフォードも出資を行い、全固体電池の共同開発を行っている。
BMWもフォードも、Solid Powerとの取り組みについてはあまり詳細を明らかにしておらず、2018年・2020年に行われたシリーズA(Crunchbase上)でも両社とも参加していないため、研究プロジェクトの継続については不明なところであった。しかし、2020年12月にSolid Powerが全固体電池技術の開発状況をプレスリリース1)した際に、両社との共同開発を行っていることについて言及しているため、現在も開発は進捗していると想定される。
(今回参考のプレスリリースはこちら)
ニッケルリッチ正極やシリコン負極、リチウム金属などの先進リチウムイオン電池に関する技術動向の全体像を知りたい方はこちら。
参考:(特集)車載向け次世代電池の技術開発動向① ~先進リチウムイオン電池~
【世界の電池ベンチャーを調査したい方】
先進リチウムイオン電池、全固体電池、負極材や正極材など、世界のベンチャー企業や大学研究機関のリサーチに興味がある方はこちら
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