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全固体電池のSolid PowerがSPACで上場し、最大約560億円の資金を調達

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今年5月にフォードとBMWからシリーズBで130m$を調達した全固体電池ベンチャーのSolid Powerが、今度はSPACで上場することが発表された。Decarbonization Plus Acquisition Corporation III ("DCRC")との合併となり、合併後はナスダックへ上場する。

硫化物系電解質を使った固体電池を開発中

2012年に設立されたSolid Powerは硫化物系電解質を使った固体電池を開発している。負極にはリチウム金属を使い、正極には直近はNMCベースという構成だ(直近で開発が進むのはシリコン負極)。5月にフォードとBMWからシリーズBで130m$を調達しており、話題となった企業である。

ARPA-E講演資料を基に筆者作成

技術の詳細については以下を参照。

詳細:BMWとフォードが全固体電池ベンチャーのSolid PowerのシリーズBに参画

今回、さらに新しい情報としてSolid Powerは複数の負極・正極材のバリエーションで開発を進めていることも明らかにされた。シリコン負極×ハイニッケル正極の固体電池で400Wh/kg前後、そしてリチウム金属負極×ハイニッケル正極の固体電池で400Wh/kg超、さらに将来的にはコバルトフリーの超低コスト固体電池も想定しているようだ。

開発ロードマップも明らかに

今回、Solid Powerが明らかにした開発ロードマップと、これまでの同社の発表を交えて見ていこう。

Solid Powerの開発ロードマップ

Solid Power公開資料を参考に筆者作成

同社が開発する全固体電池には、シリコン負極とリチウム金属負極の2つがあり、リチウム金属負極についてはやや開発の時間軸が長いことが明らかにされている。

同社は5月に「2022年初頭にパイロット生産ラインでAutomotive-Scaleの電池を生産する」とアナウンスしていたが、これはリチウム金属負極ではなく、シリコン負極セルの全固体電池であることが、上記のロードマップから伺える。順調に開発が進めば、シリコン負極の固体電池は2026年に量産開始、そしてリチウム金属負極の固体電池は2027年に量産開始と想定されている。

SPACにより最大560億円を調達

今回のSPACの一連の取引により、同社は、1億6500万ドルのPIPEと、合併するDCRCの信託現金からの3億5000万ドルを合わせて5億1500万ドル(約560億円)の資金を合併後に得ることになる。(注:DCRCの公的株主による償還がないと仮定する場合)

Crunchbaseによると、前回のシリーズBまでで、同社は累積186.5m$(約205億円)を調達してきた。今回のSPACにより、最大で累積765億円もの資金を調達していることになる。

一連の取引は、2021年の第4四半期に完了する予定だ。

 

同社HPはこちら

今回参考のプレスリリースはこちら


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参考文献:

1) Solid Power SEC Filings(リンクはこちら


  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

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