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Fitbitがスマートリング型デバイスの開発を模索

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ウェアラブルデバイス大手のFitbit(現在はGoogleが買収)が、これまでのスマートウォッチデバイスではなく、スマートリング型デバイスの開発を模索をしている可能性が明らかになった。

Fitbitがスマートリングデバイスの特許を出願

Fitbitは、新しいスマートリング型の特許を出願している。2020年12月に出願され、今年の6月に公開されている。

Fitbitが出願した特許で触れているスマートリング型デバイス

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特許US20210169345からの引用

さて、このスマートリングデバイスであるが、特徴としては血中酸素飽和濃度(SpO2)を測定することができるものであるようだ。SpO2は近年、スマートウォッチでも測定できるものが出てきており、慢性呼吸器疾患のモニタリングや睡眠時無呼吸症候群の検知、またコロナウイルスにおける簡易スクリーニングなどで使うことができるため、注目されているバイタルサインである。

参考:SPO2がわかると何が嬉しいのか?~ウェアラブルデバイスでSpO2が注目される訳~

Apple WatchやFitbitのスマートウォッチの先端機種では一部の国でSpO2の表示ができるようになっているが、必ずしも常時精度高く測定できるわけではない。特に従来のスマートウォッチは、発光LEDで照射した光の反射光を読み取ることでセンシングを行っている。この反射光を読み取る形式は、光の透過検出によるセンシングと比較して、よりノイズが多くなる傾向があり、皮膚との接触が無い状態であるとノイズが悪化する。

また、スマートウォッチになると多機能で、表示画面もあるため、バッテリーも持たないことも課題として挙げられている。

そこで、精度の高いSpO2の測定を目的として、光源と光検出器がリングの内側についたスマートリングが提案されている。なお、特許では指先につける指輪型だけでなく、デバイス形態の可能性としてイヤリングやピアス、ブレスレッド型なども想定されている。

このデバイスは酸素飽和度(SpO2)、脈拍、血圧、血糖値、等脂質濃度、カルボキシレベル、ヘモグロビン濃度(ヘマトクリット値)をモニタリングする。

(補足)血圧や血糖値とあるが、正確にセンシングできるかは別問題なので注意。特許はあくまでSpO2をメインとした特許となっている。

Oura Ringも注目されている

なお、最近ようやくいわゆるガジェット界隈でも日本で注目されてきたOura Ringであるが、こちらが指輪型生体センシングデバイスの先行技術となる。

参考:睡眠モニタリングデバイスのOuraがシリーズCで約109億円の資金調達を実施

Oura Ringは睡眠モニタリングに特化したデバイスであるが、心拍変動が正確に測れることや、抹消体温の測定もできることから、ユニークな生体センシングデバイスとなっている。そうした特徴も相まって、コロナウイルス感染の兆候検知に向けた研究も行われている。

参考:Oura Ringでコロナウイルス感染の兆候検知ができる可能性が発表される

ちなみに、よくOura Ringは睡眠状態が正確に測定できる、という紹介のされ方をされるが、Fitbit等と比較している論文を見ると、必ずしも睡眠ステージ(レム睡眠やノンレム睡眠等)の測定において、他のデバイスより正確に測れるかというと、大きな有意差は見られない。

参考:睡眠モニタリングデバイスのOura Ringは生体センシングの新しいプラットフォームになるか?


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参考文献:

1) Your next Fitbit might be a stylish stack of smart rings, TechRadar

2) US20210169345 - RING FOR OPTICALLY MEASURING BIOMETRIC DATA


  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

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