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培養肉ベンチャーのAleph FarmsがシリーズBで約115億円の資金調達を実施

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7月7日、イスラエルの培養肉ベンチャーであるAleph FarmsがシリーズBで105m$(約115億円)の資金調達を実施したことを発表した。

今回の資金調達ラウンドでは、世界のコンシューマー製品領域に注力するGrowth Fund of L Cattertonと、中東の大規模ベンチャープラットフォームのDisruptADが主導で実施され、Skyviews Life Scienceや、Thai UnionやBRF、CJ CheilJedangなどのグローバルな食肉企業のコンソーシアムが新規投資家として参画している。また、既存投資家であるVisVires New Protein、イスラエルの食品大手Strauss Group、米国の穀物メジャーであるCargill、Peregrine Ventures、CPT Capitalも出資を行った。

これまでの累計資金調達額は118m$以上になるという。

細胞培養によるビーフステーキの生産技術を開発

Aleph Farmsは2017年にイスラエルで設立されたベンチャー企業である。出自は、イスラエルの食品会社であるStrauss GroupによるCVCである「The Kitchen Hub」に在籍していたDidier Toubia氏と、テクニオン工科大学生物医学工学部のShulamit Levenberg教授(※1)によって設立された。

※1 なお、Shulamit Levenberg教授は現在、同社のCSA(チーフサイエンスアドバイザー)を務めており、「Scientific American」によって、"Tissue Engineering"の分野で世界をリードする50人の科学者の1人に選ばれている著名な研究者。

テクニオン工科大学の研究で生まれたこの技術は、非GMO(非遺伝子組み換え)であり、筋肉組織を再生および構築するために牛で発生する自然なプロセスを再現することに成功。同社は、そのプロセスの原因となる細胞を分離し、動物の外でそれらを成長させて、ステーキで見られる典型的な同じ筋肉組織を形成する方法を発見した。

同社がターゲットとしてステーキを選んでいる理由には、同社の技術では3Dテクスチャ構造のある筋のような質感を実現できるからだ。同社は動物や環境に害を与えることなく、ジューシーでおいしいステーキを作ることを目指している。

2022年に市場投入を予定

今回のプレスリリースによると、同社は2022年に最初の製品を市場投入することを予定しており、今回調達した資金を使って生産のスケールアップを行い、栽培ビーフステーキの大規模なグローバル商業化とポートフォリオ拡大の計画を実行するという。

Aleph Farmsの共同創設者兼CEOのDidier Toubia氏は、次のように述べている。

「比類のない経験と専門知識を持つ一流のパートナーからのこの追加資本は、いつでも、どこでも、誰にでも高品質の栄養への、安全で無条件のアクセスを提供するという私たちのビジョンに非常に近づきます。私たちは投資家をこの新しいカテゴリーを構築するためのパートナーと見なしています。世界の食料システムの持続可能性を改善するという私たちの強いコミットメントをパートナーに共有することが私たちにとって重要でした。」

3Dバイオプリンティングによるリブアイステーキも開発

同社はポートフォリオの1つとして、今年2月に3Dバイオプリンティングによるリブアイステーキを開発したことも発表している。

なお、この栽培プロセスはローカライズできるように様々なパラメーターが管理されており、特定の要件に合わせて肉を調整するために、コラーゲン、結合組織、脂肪の量を調整して、ローカル市場向けに特別に肉を設計することもできるという。

なお、CEOのDidier Toubia氏は、”厚くて太いリブアイの開発に1,400万ドルを投資し、肉製品を大規模に栽培するためのコストの同等性を達成するのに5年かかると見積もっている”ことをワシントンポストのインタビューで語っている1)

 

同社HPはこちら


ー 技術アナリストの目 -
シリーズA時には10数m$規模の調達額だったのが、いきなり100億円超もの資金調達をシリーズBで行うというのは、非常に大きなジャンプであり、あまり見られません。よほどシリーズA後の商品開発で、良いサンプルができたのだと思います。技術の出自もしっかりしており、穀物メジャーも注目するベンチャー企業なので、これから一気に2022年の商品ローンチに向けて加速していくものと思われます。

【世界の代替肉ベンチャー技術動向に興味がある方】

世界の培養肉・植物性タンパク質ベンチャー等の技術動向、網羅的なロングリスト作成、大学も含めた先端技術調査に興味がある方はこちらも参考。

参考:グローバル受託技術リサーチはこちら


参考文献:

1) Raising the steaks: First 3-D-printed rib-eye is unveiled, The Washington Post


  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

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