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非侵襲超音波治療技術のInsightecがPEラウンドで約240億円の資金調達を実施

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ヘルスケア企業のInsightecが2024年6月、プライベートエクイティ(PE)ラウンドで$150m(約240億円)の資金調達をしたと発表した。

同社は1999年設立のグローバルヘルスケア企業。イスラエルのハイファと米国のマイアミに拠点を置き、ダラス、上海、東京、フランクフルトにオフィスを構える。同社の提供する治療デバイスは米食品医薬品局(FDA)などの機関から認可を受けており、世界各国の医療機関で使用されている。

手術を伴わない治療で患者の負荷を軽減、運動障害に効果

Insightecが提供するMRガイド下の集束超音波法(MRgFUS)は、脳に集束させた超音波をあてて温度を上げ、凝固させることで治療する技術。手術を伴わずに、パーキンソン病や本態性振戦などの運動障害を治療できる。

頭部の切開が不要となるため患者の身体的な負担が少なく、治療時間や回復期間の短縮も見込まれ、医療コストの削減と患者の生活の質の向上も期待される。

同社の治療デバイスである「Exablate Neuro」の外観は、MRIとほぼ同じだ。冒頭で述べたFDAの他、カナダ、EU、日本などで認可を受けている。同社のウェブサイには、国内で利用可能な病院も掲載されている。

2024年1月には、アップグレードした新製品「Exablate Prime」を発表した。


Exablate Prime(Insightecレスリリースより)

調達資金は治療対象の拡大が目的か?過去にはPhilipsとも提携

同社の発表によれば、今回の資金調達は、Fidelity Managementなど3社の投資会社・ベンチャーキャピタル(VC)が主導。これまでの資金調達も含め、コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)からの投資は確認されていない。

InsightecのCEO兼会長であり、医学博士号を有するMaurice R. Ferré氏は、「この資金調達により、運動障害に苦しむ多くの患者に非侵襲的な神経外科治療を提供するため、さらに新たな適応症のための計画的かつ戦略的な投資を継続できる」と述べた。

同氏のコメントからは、MRgFUSの治療対象の拡大へのもくろみがうかがえる。具体的には現在のパーキンソン病や本態性振戦に加え、神経関係の疾病への適用が考えられる。

なお、同社には事業会社からの資金が入っていないのは前述した通りだが、2020年にはPhilipsと業務提供したことを発表している。PhilipsのMRIと互換性を持たせるための開発を行うとともに、MRgFUSへの「アクセス拡大」が目的だった。


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  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

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