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Isar Aerospaceが総額357億円を調達へ、民間発の「持続可能な宇宙開発」を目指す

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ドイツを拠点とするスペーステックのスタートアップ、Isar Aerospaceは2024年6月20日、シリーズC資金調達ラウンドで€65m(約105億円)を上積み、同ラウンドの調達総額は€220m(約357億円)超となったことを発表した。同社は2018年の創業以来€400m(約650億円)を超える資金を調達しており、ヨーロッパにおける新興宇宙企業のリーダーとして知られる。

デビュー間近のロケット「Spectrum」を開発

Isarは「持続可能」をテーマにした宇宙へのアクセスを実現する技術を開発している。同社が開発中の2段階式宇宙ロケット「Spectrum」はノルウェーの宇宙港からの打ち上げを予定しており、運用が開始されれば1回の打ち上げで最大1000kgのペイロードを低地球軌道に投入できるという。

持続可能、という点については推進剤を液体酸素とプロパンとし、二酸化炭素(CO2)排出量を必要最小限とすることで目指す。

当地のメディアであるHandelsblattによれば、初の打ち上げは今夏中になるという。

防衛分野からも期待、新工場で量産体制構築へ

今回の資金調達ラウンドには、新規投資家として複数のベンチャーキャピタル(VC)とともにNATO Innovation FUND(NIF)が参加した。NIFは安全保障同盟であるNATOが設立したファンドで、ポートフォリオにはロボットやAI関連のスタートアップがある。既存投資家ではAirbus Venturesなどが応じた。

今回の調達資金は、Spectrumの開発と大規模な新本社・工場の建設に使われる予定だ。Isarはこの発表に先立つ5月、ミュンヘン近郊のファターシュテッテン市の用地をVGP Groupより供給を受ける契約を締結したことを発表している。当地は工業地域であり、近隣のVGPが所有する不動産にはBMWも入居しているという。この施設が稼働すれば、年間最大40機のスペクトラムロケットが生産可能になる見込みだ。

IsarのCEOである Daniel Metzler氏は「ヨーロッパ政府が世界的に遅れを取らないためには民間のイノベーションを促進し、活用する必要がある」と述べた。NATO同盟国24カ国が支援するNIFからの支援は、防衛分野における期待を示唆するといえよう。


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  • 記事・コンテンツ監修
    小林 大三

    アドバンスドテクノロジーX株式会社 代表取締役

    野村総合研究所で大手製造業向けの戦略コンサルティングに携わった後、技術マッチングベンチャーのLinkersでの事業開発やマネジメントに従事。オープンイノベーション研究所を立ち上げ、製造業の先端技術・ディープテクノロジーにおける技術調査や技術評価・ベンチャー探索、新規事業の戦略策定支援を専門とする。数多くの欧・米・イスラエル・中国のベンチャー技術調査経験があり、シリコンバレー駐在拠点の支援や企画や新規事業部門の支援多数。企業内でのオープンイノベーション講演会は数十回にも渡り実施。

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